1. HOME
  2. 事例紹介
  3. システム内容別
  4. 出版システム
  5. 幻冬舎創業25年、営業を支えたERPシステム

事例紹介

Case

出版システム総合出版

幻冬舎
創業25年、営業を支えたERPシステム

新聞記事の内容《PDF》 A4資料《PDF》

出版ERPシステム
(書店・販売・制作原価・定期購読・Web受注)
幻冬舎様(文化通信bBB 2017/4/3 掲載)

㈱幻冬舎

設 立 1993年11月12日
所在地 〒151-0051 東京都渋谷区千駄ケ谷4-9-7
代表者 見城徹
資本金 3億3591万円

 創業25年を迎える幻冬舎は、これまでミリオンセラーを23点生み出してきたが、優れた企画力とともに、POSデータから書店の販売力を把握して、毎年、販売促進担当者が特約書店と販売目標を共有する営業手法で確固とした地位を築いてきた。この営業活動を支えてきた光和コンピューターの販売管理システムは、20年近く活用し、進化を続けてきた。株式上場なども経験してきた同社とシステムについて、花立融取締役常務執行役員に聞いた。

上場に向けシステムを再構築

 同社は1993年に見城徹社長が角川書店(現KADOKAWA)から独立して創業、翌1994年に単行本6点を刊行して出版活動を開始した。ただ、当初は1カ月に数点の単行本を出す程度だったため、それほど大がかりなシステムを必要とはしなかった。

 それが1997年に幻冬舎文庫を一挙62点で創刊したことに伴い、販売管理への負荷が急激に増大。新たなシステムを導入したが、さらに2003年の株式店頭公開に向けた準備の中で、上場に対応できるようシステムを再構築するため、複数のシステム会社にプレゼンを求めた。

 その中で光和コンピューターを選択した理由について、当時、営業部長としてシステム導入に携わった花立取締役は、「上場に向けた考え方、資料の作り方など、こちらがやりたいことをわかってくれて、すぐに形にしてもらえました」と振り返る。この時以来、両社は20年近くの付き合いとなった。

販売管理はほぼシステム化

 このときに導入した光和コンピューターのERPシステムは、書店の販売実績を管理する「書店管理」、取次との受発注、請求業務などを行う「販売管理」、さらには「制作・原価管理」、「印税・支払管理」、「定期購読管理」、「Web受注」などを含んだ総合的な出版システムだ。

 このシステムが稼働したことで、「販売管理はほぼ完壁にシステム化できたほか、在庫管理、断裁処理、商品マスタメンテナンス、請求業務なども軽減されました」(花立取締役)。当時、請求書発行が迅速に行えるようになり、取次からも歓迎されたという。

法人中心の特約書店に集中

 同社は書店営業担当者6人で全国をカバーしているが、文庫の販売実績に基づく販売上位の150法人と単独店500店の合計4500店舗を特約書店として、「新刊」「重版」の指定配本を実施している。この特約書店は同社売り上げの75%を占める。

 特約書店以外でPOSデータが収集できる書店の販売シェアが5~7%、データが見えない書店が18~20%あるが、75%に集中することが、結果として全体の効率を上げることになると、これまでの経験から判断している。ここに販売促進することが、営業担当者にとって最も重要な仕事だ。

年度始めに販売目標を共有

 特約法人とは年度初めに「販売目標確認書」を交わし、営業部員にとっても担当書店が目標を達成することが自身の目標になる。そのため「自分が担当する法人の数字は絶えず確認しなければなりません」と花立取締役は同社が築いてきた販売手法にシステムが欠かせないことを説明する。

 目標設定は、文庫の推定総販売部数に対するその書店の占有率を算出し、同社が期首に設定する総販売部数目標に占めるその書店の前年占有実績に、その年の出店予定などを加味して具体的に設定する。

 特約書店の販売実績は、インテージのPOSデータ収集ネットワーク「出版POSシステム」などから月単位で収集し、翌月の20日過ぎには営業担当者のパソコンで前年比を含めて確認することができる。

 担当者はまず単行本、文庫、新書といった大ジャンル別に各法人の売れ行き前年比をチェックし、目立った傾向があれば単店、単品の数字からその原因を探る。

 「成績が悪い場合は売れ筋に特化するよう働きかけ、良い場合は何を売り伸ばしているのか確認し、こちらで把握していない商品なら拾い出して全国展開するということもしています」(花立取締役)。

 また、書店の販売シェアを細かく管理していることで、担当者はその書店の販売力を考えながら営業できるとともに、ある書店で商品が動き出せば、そこから全体の動きを推定することもできる。

 「少人数で全国の書店さんのデータを収集し、管理することができる体制を整えることができたのは、システムのおかげでした」と花立取締役は述べる。

電子書籍管理システムも導入

 このあとも、同社では出版VANの直受注対応、分社化した幻冬舎コミックス、幻冬舎エデュケーションの販売管理システム、電子書籍管理システムなどを導入し、システム強化を続けている。

 このうち、2012年に導入した電子書籍管理システムは、紙版に比べると複雑な電子書籍の売り上げと印税支払いを管理するもので、従来の紙版の印税管理とも連動させている。

 電子書籍は電子取次や電子書店といった取引先が10数口座にのぼる上に、売上報告の様式がそれぞれ違う。金額一つとっても税込、税別、海外法人の場合は無税などまちまちで、各電子書店、電子取次の売り上げを集計して印税を計算する手間が膨大にかかる。特に「3年前に比べると2倍ほどに伸びています」(設楽悠介コンテンツビジネス局部長)というほど業量が伸びているためなおさらだ。

 導入した管理システムでは、各取引先ごとのフォーマットで送られてきた売上報告を取り込み、アイテム別に集計して印税を支払うことができる。現在は約3500点の文字もの電子書籍をこのシステムで管理しているが、今後はサブスクリプションなど新しい販売方法に対応したシステムのアップデートも検討している。

将来に向けシステムさらに重要に

 これまでのシステム利用について花立取締役は「上場する前とあとでは管理面で天と地ほどの差がありました。いま、そして将来を考えても、それを経験して、システムを運営してこられた経験はありがたいです」と述べる。

 そして、システムベンダーとの付き合いについては、「システムというと冷たい印象がありますが、やはり人が大きいです。光和コンピューターの担当者は、何かあればいつでも来てくれて、真摯に対応してくれる。そのことには感謝しています」と述べている。

 そして、今後については「これからの環境を考えれば、これ以上人を増やすことは考えられません。システム化できる仕事を見極めて次の時代に備える必要があります」とさらにシステムの重要性が増すと指摘する。