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事例紹介

Case

出版システム専門書出版

人文書院
データ抽出スピードが格段にアップ

新聞記事の内容《PDF》 A4資料《PDF》

出版ERPシステム
(販売管理、出版VAN、印税計算システム)
人文書院(文化通信BBB 2020/7/6 掲載)

株式会社 人文書院

創 業 1922年
代表者 渡辺博史
従業員 9人
所在地 〒612-8447 京都市伏見区竹田西内畑町9

 京都の人文書院は、光和コンピューターのシステムを導入し、今年3月から本格稼働した。担当者は「まだ3ヵ月なので、すべての機能を活かしきれていない」とし、「効率化、利便性を感じるのはこれから」と話す。
しかし、「データの取り出し作業が大きく改善された」と、今後の効果に期待を示している。

京都で創業98年の老舗出版社

 京都に本社を置く人文書院は、現社長・渡辺博史氏の祖父にあたる渡辺久吉氏が、1908年に日本心霊学会を立ち上げ、会報誌『日本心霊』の発行や、千里眼事件で有名な福来友吉の著作『観念は生物なり』などを出版した。22年、日本心霊学会出版部を設立し、本格的に出版事業に乗り出した。

 社名の由来は、日仏会館の創設にも携わった京都大学医学部心理学の今村新吉教授が、フランス語「ユマニスム(ヒューマニズム)」の意味「人文主義」から名付け、27年に出版部を人文書院に改名。創設当時は、心理学関係の出版が多かったが、次第に国文学、評論随筆の分野にも広げていった。

 55年、久吉氏の長男・睦久氏が社長に就任。ゲーテ全集やフロイト著作集、サルトル全集を刊行した。66年には同社の働きかけでJ-P・サルトルと、同じフランス人作家のボーヴォワール両者の来日を実現させている。

 人文書系の出版社として知られるが、近年は社会・政治・経済学などの一般書や文芸書へもジャンルを拡大させ、年間約30点を刊行。2年後に100周年を迎えるため、現在記念企画などの計画を進めている。

『嘔吐』は40万部超えのヒット

 戦後はサルトルの全集(全37巻)や、H・Kヘッセ(独)の著作集(全23巻)などの翻訳集を多く手掛けた。中でもサルトルの『嘔吐』は50年の全集版、94年の改訳新装版、2010年の鈴木道彦による新訳と数度にわたって刊行し、累計40万部のロングセラーで、現在も一定部数の注文があり、主力商品となっている。

版元仲間からの紹介で安心感

 同社は、光和コンピューターの販売管理、出版VAN、印税計算のシステムを導入し、今年3月から本格稼働した。

 それまでは、システムメーカーのオフコンを活用していたが、営業部・佐藤良憲部長によると「その社がオフコンから撤退して、当社に内部システムまで理解している人材もおらず、在庫の情報管理や、エラーが出た時の対応に不安があった」とし、さらに「オフコン自体の寿命が突然訪れたとき、蓄積データがすべて消失する。早急にwindowsベースのシステムに移行する必要があるということは常に考えていた」と導入理由を語る。

 光和コンピューターを採用したことについては「同じオフコンから移行した親交のある京都の化学同人さんや、人文書系の出版社複数が採用していて、紹介もいただき、安心感があった。その際、『文化通信B.B』のシステム切り替えの記事で、同じ京都のミネルヴァ書房さん(2019年3月25日付)や、化学同人さん(同2月25日付)の内容は、導入の理由や経緯が当社と似ていてたいへん参考になった」と話す。

まずは必要最低限の機能を

 前述の3つのシステムについて、「光和コンピューターの基幹システムはとても魅力的。しかし、すべてを導入すると、旧式よりも機能は増すが、その分、使いこなすのも大変。まずは営業部が活用する必要最低限のシステムに絞った」と佐藤部長。

 出版VANは、オフコンではモデムを設置し、電話回線を使っていたが、新システムはデータの取り出し作業のスピードが格段に速くなっているという。

 昨年10月からの試運転では、これまで自動的に入力されていた顧客分類ごとの掛率の設定や、消費税計算、送料の扱いなどが、まったく違うシステムになったため戸惑ったという。特に常備品の扱いは相違が大きく、これまで寄託期日で手動管理していたものが、取次請求期日で自動管理されるようになり、データ移行をはじめとする作業の障害となった。

 佐藤部長は「これまで手動で十分だったものが自動化され効率的になる一方、これまでの習熟がかえって仇になることがある」と切り替え時の問題点を話すが、「システム自体を理解していけばどんどん自動化による作業効率が高まっていくのでは」と期待を示す。

書店の利益に繋がるシステムを

 同社は、自社内と本社近くに40坪の倉庫を持つ。現在はシステムと連携していないが、今後、進めていきたいという。佐藤部長はシステムの将来に向けて、「出版界の未来のために、まずは書店の利益を確保することが大前提。これを実現させるために出版社はデータ作業などの無駄を省いて利益を確保し、少しでも書店に還元していかなければならない。この流れがしっかり構築できるシステムを考案してほしい」と要望している。