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事例紹介

Case

書店システム

啓文社(広島)
レジ台数増設もコストダウンに結びつく 書店に精通したシステム会社への信頼

書店システム
啓文社(広島)
(文化通信 BookLink 2023/11/28 掲載)

「書店のビジネス経験が長い光和さんは頼りになる」と島谷店売本部長

広島、岡山で11店舗を展開する株式会社啓文社(広島県尾道市・手塚淳三社長)は、昨年6月の岡山本店(岡山市北区)を皮切りに、日本出版販売(日販)のPOSレジを利用する7店舗で、株式会社光和コンピューター製のセルフレジを導入した(4店舗はTSUTAYA BOOK NETWORK加盟店)。それから1年半、導入1号店の岡山本店で、島谷成寿店売本部長にセルフレジの効果などについて聞いた。

書籍特有の2段バーコードに対応

島谷さんによると「コロナ禍によるお客様との接客距離の問題、省人化の必要性、セルフレジの普及により利用者の抵抗感が薄まってきたこと、そして日販の旧POSの使用期限が近づいていたことなどが重なり、新システム導入の検討を進めていました」と導入経緯を説明する。

光和コンピューターは、出版業界に特化した事業を展開してきた強みを生かし、日販の新POS対応のセルフレジ開発を進め、完成したことから啓文社も光和サイドと協議を始め、導入を決めた。

このほか導入の決め手になった点について島谷さんは「書籍には一般の商材と違い、ISBNと分類・価格コードの2段バーコードになっているので、お客様がバーコードを読み込ませる際にエラーが出る機種もあるようです。光和製のレジは2段バーコードを一度に読み取れるので書店に適しています」という。また、「TSUTAYAの店舗も1店舗でレンタル用にセルフレジを入れていますが、今後、2段バーコードを一度に読めるシステムに改善され、お客様の使い勝手も向上するでしょう」という。

岡山本店は2008年、グループ店舗として最大規模の700坪でオープン。現在は売上においてもトップを誇る。セルフ導入1号店は、社員の配置やスタッフレベルなどを考慮し、旗艦店の岡山本店からスタートするのがベストだと判断した。

買い物袋、ブックカバーなどを入れる什器はセルフレジとパッケージ化

精算作業は圧倒的に時間短縮

導入前、同店では有人レジを店内中央に4台、コミックコーナーに1台設置していたが、中央にセルフレジ6台(内キャッシュレス専用2台)、コミックコーナーは防犯タグを外す作業が必要なため、セミセルフレジ(スタッフがスキャン/購入客が支払機で清算)1台を設置した。

導入当初は、会計作業のスピードが落ちることが予想されたため、有人レジの数より1~2台多く増設。TSUTAYA系の小規模店2店舗は、従来から少数スタッフで低コストが実現できていることから、現状では有人レジのまま運営していくという。

セルフ導入から1年半が経過し、効果について島谷さんは「当初から導入3カ月から半年は、人員(人件費)は維持すると決めていました。お客様の慣れや、不具合・課題の抽出、スタッフによるフォローなど接客で注視すべき点、我々もある程度の訓練が必要なので、セルフ導入で即省人化と簡単にはいかないと考えました」と話す。

しかし、今年に入り、スタッフ対応、課題改善などが着実に進み、コスト削減にも結びついているという。また、島谷さんは「閉店時の精算作業は圧倒的に時間短縮されました。精算ボタンを押すだけで自動計算し、全レジ同時に精算できます。何より違算が出ないことに全スタッフ喜んでいます」と手応えを語る。

コミックコーナーでは支払いのみ機械で精算するセミセルフ形式

 

イベント告知のタイミングに苦慮

課題については、「総合的、また効率化の観点では満足していますし、導入は正解でした。ただ、細かい点で言えば、お客様が会計をスタートすると、『ポイントカードの有無』、『ブックカバー、買い物袋の必要or不要』、『商品読み取り』、『支払方法選択』の順に表示されますが、この表示順を変更できないか。また、ポイントカード『無し』を選択したお客様に会員カードへの入会を勧める表示が出ないか、など多々あります。ただ、こうした課題は書店に限らず、小売を営んでいればどの業種も同じ。システム構築には莫大なコストが掛かるので、あまり無理を言えないことは承知しています」と話す。

また、「当社は日販の『HonyaClub』と連動した会員カードを使用していますが、1年間未使用だとエラーが出るといった課題もあります。ほか、図書カードは専用端末をつないでいますが、旧磁気式と、NEXTのQRコード用で操作方法が異なるため利用客が困惑することがあります。これらは光和さんだけが取り組むべき問題ではないですが、日本図書普及や販売会社、もちろん書店も協力して最善策が見出せればより良い方向に進むと考えます」と提案する。

常時セルフレジ専属スタッフを配置

「運用面での課題は、抽選会や読み聞かせといったイベントに向けて、有人レジのときは会計時に口頭で告知し、一定の効果がありましたが、セルフになると意外に難しい。セルフに手慣れた人は素早く済まして立ち去りますし、手間取っている人にはイベントのPRどころじゃありません」と、声掛けのタイミングを模索しているという。

最後に「光和さんは書店向けの事業経験が長く、セルフレジ導入による効率化を含め、様々なアドバイスをいただきました。成果は確実に出ています。コスト面だけでなく、セルフ導入によって、これまで以上に魅力的な棚づくりや、POP作成に注力できています。今後も光和さんとは連携して新しい書店の形を探っていきたいと考えています」と期待を寄せていた。

キャッシュレス決済専用レジ2台を設置。コストダウンの点もメリット