紀伊國屋書店 オリコン・リサーチ 光和コンピューター
「K-note」
「シリーズ別管理情報データ」
コミックの検索に力を発揮
書店ERPシステム
共同開発した業務システム(K-note)
紀伊國屋書店 オリコン・リサーチ 光和コンピューター(文化通信bBB 2016/4/4 掲載)
「K-note」紀伊國屋書店 オリコン・リサーチ 光和コンピューター
紀伊國屋書店は光和コンピューターと共同開発した業務システム「K-note」を利用しているが、商品検索で、オリコン・リサーチが提供する「シリーズ別管理情報データ」を活用している。特に巻数が多いコミック、ライトノベルなどでは有効だという。
コミッタの検索で活用
紀伊國屋書店新宿本店第四課(コミック)・山崎陽子係長は、かつて文庫担当からコミックに異動したとき、「シリーズ別管理情報データ」の存在を知り「すごいと思った」と述べる。
コミックは巻数が多いうえに、同じタイトルの作品にスピンオフ作品や限定版なども存在し、慣れないと顧客からの問い合わせに的確に答えることが難しい。例えば「ガンダム」などはシリーズも多いうえに複数の出版社からコミックのほか、文庫、画集、限定版など他品種が発売されており、タイトルで検索しても結果表示が多すぎて目的の商品を見つけることが難しい。
「シリーズ別管理情報データ」を利用すればシリーズごとに検索できるため、顧客からの「何巻まででていますか」といった問い合わせはもちろん、同じシリーズでタイトルが違う商品、コミカライズ、ノベライズ、第1期シリーズ、第2期シリーズなど関連シリーズの問い合わせにも的確に対応できるという。
シリーズを特定しにくいBLコミック
特に山崎係長がこの売場に来て初めて担当したBLコミックの場合は、「タイトルが違うのに同じシリーズだったり、ナンバリングされていないのに同じキャラクターが登場するなど、読んでいないとわからないシリーズ作品も多い」という。
実際、榎田ユウリ「〈魚住くん〉シリーズ」は、当初は光風社から『夏の塩』 『 プラスチックとふたつのキス』『メッセージ』 『過敏症』『夏の子供』とそれぞれ別タイトルも付いて刊行されたが、その後、大洋図書から上製本で新装版が刊行され、現在はKADOKAWAからシリーズ名の入った文庫として発売されている。
「慣れていないとタイトルだけではシリーズだと気がつかないこともあり、発注し損なったりします」と山崎係長。そんなときにも「シリーズ別管理情報データ」が役に立つ。
同社ではレジコーナーやバックヤードで従業員が使用する業務システム「K-note」で「シリーズ別管理情報データ」を利用している。
発注にも活用
顧客からの問い合わせ対応のほか、新刊コミックの発売時にも、「1巻前の発売時にその前の巻が何冊売れたのかを確認して、前巻の発注数を判断します」(山崎係長)といった発注面でも役立っている。
山崎係長は入ってくる新人にも「シリーズ検索するとわかりやすいと、テクニックとして教えています」という。
オリコン・リサーチが2014年から提供
「シリーズ別管理情報データ」は、オリコン・リサーチが2014年12月に提供を開始した書籍(コミック、ライトノベル)と映像、音楽の3ジャンルのパッケージを結びつけ、シリーズごとに商品を管理することができるデータだ。コミック、ライトノベルは12年から提供開始している。
作品ごとにシリーズの関連商品を一覧化できるため、書籍は単巻タイトルに加え、スピンオフ、ノベライズのほか、タイトルが変更された続編なども網羅する。また、「ディズニー」「ガンダム」など、大きなテーマでも検索できる。
これまでに、主に、ECショップや書店などが導入しているというが、同社と直接契約して書店、ECショップがシステムを構築するケースや、光和コンピューターなどのベンダーのシステムに組み込むケース、検索機のメニューを追加するケース、などがあるため、利用料金などは個別対応となる。
信頼性高いデータ作成
タイトルごとの管理情報の制作は、すべて手作業で行われている。「おそらく、過去作品も含めて網羅しているのは当社だけではないか」とオリコン・リサーチ・小田浩嗣副社長は話す。
調査会社としての長年の歴史とブランドによって、販売データの調査協力店はCD・映像で2万3000店以上、書籍は3600店以上におよび、売り上げデータの信頼性は高いという。
導入にあたっては、単巻(単体)ごとに管理している既存のデータベースの「ISBN」や「JAN」と「シリーズ別管理情報」をひもづけるため、一からデータベースを構築する必要はない。
また、「シリーズ別管理情報」、は、データベース内で在庫、売上管理と結びつけることも可能。さらにオリコン・リサーチでは、2015年4月から「総合シリーズ別ランキング」のデータ発表も開始した。
それまでは商品単位で同社が集計した売り上げデータを発表していたが、「書籍」「音楽」「映像」の三つをすべて合算したことで、人気作シリーズの売り上げの実態を総合的に調べることができるようになった。
書店では、社内のデータベースに組み込むことで、シリーズの全関連商品を簡単に検索できるため、スタッフが特集やフェアを実施する際に、異なるコーナーの商品でも効率的に調べることが可能となる。光和コンピューターの店頭検索システム「PitSpot」のように、店頭の検索機に組み込まれて活用されているケースもあり、来店客が関連商品を容易に探すことができる。
また、ECショップでは、例えばアニメDVDの商品詳細ページ で、「他メディア」、「原作コミック」、「主題歌、サントラ」など複数の商品を提案することも可能だ。
シリーズ内の巻数管理機能によって、「全巻購入」「複数購入」 「単品購入」といったさまざまな購入ニーズに対応できる。全巻購入する場合に、1点1点カートに入れる手間が省かれるので、大人買いの訴求にもつながり、「実際に『まとめ買いが増えた』という意見も届いている」(同データベース部営業ユニット・佐藤聡介氏)という。