1. HOME
  2. 事例紹介
  3. システム内容別
  4. 書店システム
  5. 株式会社谷島屋大学教科書販売ECサイトで作業効率が向上

事例紹介

Case

書店システム

株式会社谷島屋
大学教科書販売ECサイトで作業効率が向上

記事の内容《PDF》

書店システム
株式会社谷島屋
(文化通信 2025/10/28 掲載)

教科書の検索画面

伊藤課長(左)と岩清水参与

株式会社谷島屋

創 業 1872年(明治5年)
資本金 2000万円
代表者 斉藤晋一郎
従業員 300人(うち正社員70人)
所在地 静岡県浜松市中央区連尺町309-1

静岡県の老舗書店である谷島屋は、コロナ禍で大学生が登校できなくなった時期に、大学教科書のオンライン販売(EC)を開始した。今ではその大学で対面での販売はなくなり、販売の手間や時間を大幅に削減することができた。

同社は明治元年(1868年)に静岡県浜松市で書肆「博文舎」として開店、1872年に谷島屋書店を創業した。
明治新政府により学制が公布された当初から教科書販売を手掛け、いまも小中高等学校、病院・医大・看護学校、幼稚園・保育園、企業・店舗、官公庁、図書館など、静岡県全域で外商活動を続けている。
店舗は書店18店舗のほか、病院売店や英語教室も合わせると34店舗を展開。外商では浜松、磐田、焼津、静岡、富士、富士宮の6カ所に事務所を構え、県内大学はほぼ全てと取引がある。このうち最大の外商拠点である浜松本部には16人が在籍し、大学では常葉大学浜松キャンパス、浜松医科大学、聖隷クリストファー大学に教科書などを販売している。

「緊急事態宣言」でECサイト構築

教科書のECサイトを構築したのはこのうち常葉大学浜松キャンパス向け。大学の教科書販売は前期と後期に分かれており、2020年の春も、前期の教科書販売に向けて例年同様に大学から教室を借りて教科書を持ち込むなど販売準備を進めていた。そこに発生したのが新型コロナウイルス感染症拡大に伴う「非常事態宣言」だった。
「設営中に宣言が出たので、一度持ち込んだ教科書を持ち帰り、手探りで大学と対応を協議しました」と浜松外商部外商1課・伊藤秀幸課長は当時を振り返る。
協議の結果、大学が学生から注文を受けるサイトを作り、まとめた注文を谷島屋に提供。谷島屋は個別の学生宛に郵送するという対応になった。決済は「コロナが明けたら集金する」という、いかにも緊急対応を物語る取り決めだった。送料は煩雑さを避けるため、通常は教科書販売で行っていた値引きをしない代わりに谷島屋側が負担した。
こうした事態に直面し、「ちょうどオンライン販売も必要だと検討していた時期だったこともあり、すぐにECサイトを構築することになりました」と伊藤課長。まず地元のシステム会社に打診したが、ゼロから構築すると時間がかかるという反応だった。後期の販売に間に合わせる必要があったため、他社で大学教科書ECの実績があった光和コンピューターに問い合わせると、半年以内での開設が可能ということだった。実際に後期の販売に間に合った。

出荷作業1人で可能に

ECサイトは学生が会員登録してログインすると、教科書を学科別、必修・選択科目などでソートしたり、講義名、教員名などで検索することができる。注文する教科書を選び、冊数を指定して買い物かごに入れて購入する。大学生はクレジットカードを持っていないことも多いので、代金支払いはコンビニエンスストア決済を利用し、ヤマト運輸を使って学生宛に配送する。
原則として注文のキャンセルは受け付けず、そのことをサイトでも明示している。ただ、必修科目をすべてダブって注文してしまう学生などもいるため、浜松外商部・岩清水誠参与がすべての学生の納品書をチェックしている。「履歴から購入していることがわかるとこちらでキャンセルして学生にメールで知らせています。手間はかかりますが、慣れない学生さんには必要です。最初の頃は多かったキャンセルも、皆さん慣れてきたので少なくなってきました」という。
また、学生から振り込みがない場合は、大学の教務課に振込用紙を預けると学生に声をかけてくれる。「それでも退学して行方が分からなくなるなど若干のロスはありますが、大学の協力もあって数年間で数件です」(伊藤課長)という。
それ以来、同大学での教科書販売はすべてECになった。そもそも大学側は学内での現金授受は行わない考えで、対面販売からオンライン販売への移行を希望した。教員がシラバスに掲載していない教科書を指定するといったイレギュラーなケースを除き、対面販売はなくなった。
このことで、谷島屋側の手間は大きく削減された。「以前は教室にレジを据えて販売するため、最低でも2人が1カ月以上拘束されました。さらに当社の事務所から学校まで距離もありましたが、いまは事務所のそばで空き時間に出荷作業ができます。今期は荷造りなど1人でできました」と岩清水参与。
コロナ禍という緊急事態で立ち上げたサービスだが、同社にとっては作業効率を向上する後押しにもなったようだ。