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光和コンピューター
第24回光和出版セミナー
出版社・書店は、近刊情報をどう活用すべきか!
近刊情報の整備で出版社の営業が変わる!?

新聞記事の内容《PDF》 A4資料《PDF》

第24回光和出版セミナー
出版社・書店は、近刊情報をどう活用すべきか!
近刊情報の整備で出版社の営業が変わる!?
(文化通信bBB 2011/8/1 掲載)

 光和コンピューターは6月24日、東京・千代田区のアルカディア市ヶ谷で、第24回光和出版セミナー「出版社・書店は、近刊情報をどう活用すべきか!」を開き、高島利行氏(語研取締役営業部長、JPO近刊情報センター推進委員)、星野渉氏(文化通信社取締役編集長)が、4月1日にスタートした日本出版インフラセンター(JPO)の「近刊情報センター」について、現状とその可能性に関して対談した。

未登録の主要出版社も準備

星野:  「近刊情報センター」の利用状況は。
高島:  参加しているのは157出版社7団体、54書店6取次8団体です。書店は1書店1法人で参加しているところが多いので、店舗数としては多い数になりつつあります。
星野:  登録している点数はまだ少ないですね。
高島:  「近刊情報センター」に参加を表明している出版社でも、まだ近刊登録に至っていない会社もあります。ただ、参加していない主要出版社も、関心がないわけではなく、社内の調整、システムの開発も含めて進んでいる状態です。

未確定情報で登録できる仕組みに

星野:  短期間に立ち上がりましたが、どうして早くできたとお考えですか。
高島:  まず、オンライン書店などの具体的なニーズが明確にあったことです。また、JPOの「商品基本情報センター」が既に稼動していて、書誌情報を登録するという方向では足並みが揃っていたからだと思います。

 あと、重要なポイントですが、すべての情報を確定するのではなく、登録後の変更を前提としていることが理由の一つだと思います。

星野:  価格についても変更できますか。
高島:  ISBNコード以外は変更できます。極端に言えば著者やタイトルを変えることも考えられます。実際に価格は多くの出版社で直前まで決まらないことが多いと聞きます。決まらないと登録できないことにしてしまうと、途端に利用できなくなってしまいますので、変更を前提にしています。

アマゾンでは登録翌日に予約可能に

星野:  アマゾンでは近刊情報センターに登録した近刊は自動的にサイトで予約可能にしていますね。
高島:  アマゾンは、独特の企業文化を持っていると思います。確かに当社でも、「近刊情報センター」にデータを送っていますが、アマゾンは次の日には予約が取れるようになっています。

 また、アマゾン以外の書店で利用している大きな例は、紀伊國屋書店が「パブラインアシスト」の予約の仕組みに「近刊情報センター」のデータを取り込んで活用していることです。

星野:  書協(日本書籍出版協会)のデータベースにも取り組むようになっていますか。
高島:  登録する情報には「発売日」の日付を入れますが、その2週間ぐらい前から書協が取り込んでいく流れです。書協で取り込んだデータは、「商品基本情報センター」に登録されます。

 出版社からは、情報を登録する先が1カ所増えるのかという話しをよく聞きますが、今後は取次広報誌のデータとして活用されることも想定しています。そうなれば、「近刊情報センター」に登録するだけで、アマゾンや紀伊國屋書店の予約、「商品基本情報センター」への登録、取次広報誌への登録などが完結することになります。

星野:  語研ではどうやって登録していますか。
高島:  ONIX非対応で外部支援サービスを使っています。外部支援サービスとしては、版元ドットコムに参加しているので、版元ドットコムを経由して登録しています。
星野:  書店、取次の利用状況はどうですか。
高島:  書店に関して言うと、まだこれからという話しが多いと思います。実際に動き出した外部支援サービスは、光和コンピューターの「ピットスポット(PiT SPOT)」という予約端末、フライングラインのウェブ検索サービスなどがあります。

事前発注の方向へ?

星野:  私の知っている範囲で、海外で日本のように直前になるまで刊行情報がわからない国はありません。日本の場合は、取引システムがあって、出版社が事前注文をとらなくても本が書店に配本されるという、世界でも類を見ない仕組みがあるから、出版社が直前に搬入しても大丈夫でした。

 この近刊情報が画期的なのは、一方的に本を送って書店に並べてもらうのではなくて、書店からの注文を受けてものを流すという、取引構造の変化に向けた動きだという点にあると思います。

高島:  「近刊情報センター」の具体的なメリットは、まだこれからだと思いますが、事前注文を徹底して、新刊の返品率を下げていきたいという話しがよく出てきます。

 取次に流せば見計らいで全国にまいてくれるという仕組みは、出版社にとってこんなにありがたい仕組みはありません。そういう意味で、今までの仕組みは非常によくできていたとは思います。

 ただ、今までの仕組みでは返品が抑えられない状態です。また、本がこの世に存在することを読者に働き掛けないといけません。どんな本でも待っている人はいるはずです。そういった人たちに情報を届けることができるだけでも、全然違うものになってくると思います。

出てからの営業から、出る前の営業に

星野:  インフラというのは、営業をしてくれるわけではないので、営業は自分でしなければだめですね。そういう意味では、出版社の営業の仕方も発想を変えていく必要があるということですか。
高島:  先輩の出版社の皆さんから、「雑誌というのは、出るまでに準備しなければいけないことがいっぱいあって、出るとほとんど手が出せないが、書籍は出てからやることいっぱいある」と教わりました。

 しかし、近刊情報を公開していくということは、書籍も出る前にやることがどんどん増えていくという感じがします。

刊行スケジュール管理が最大のメリット

星野:  出版社にとっての近刊情報センターに登録するメリットについて改めてお願いします。
高島:  販売促進に使ってほしいとか、事前注文を取りたいということもありますが、実は、近刊情報を提供する最大のメリットは、社内のスケジュール管理が変わるところだと思います。

 私は営業関係だけでなくて広告宣伝も担当しているので、例えば、発売に合わせて広告を打つにも、新聞なら何とかなりますが、雑誌での広告締め切りのスケジュールを考えると、これまでの予定管理ではとても広告は出せません。社内の予定管理、スケジュール管理が変わりそうだというのが、今の段階では最大の収穫です。

社内で相談しながらルーチンに

星野:  障害とか、大変だったことはありましたか。
高島:  まだ完全にルーチンにはなっていませんが、事前情報の中で決めにくいのは価格です。ページ数など仕様が決まってこないことがあって、なかなか決めにくいのです。発売日が決めにくいのは勿論です。
星野:  社内から不満はありませんか。
高島:  いろいろ相談しつつ、やはり予定を決めていかないとお互いに困るし、編集も夏休みを取りたいんだからということで、どのくらいの時点で発売日を決めるかという目安を設けながら少しずつ進めている状態です。

 それでも前より少しずつ前倒しになってきています。装丁もデザイナーへの発注を早めにしようという話しになってきています。

星野:  刊行のどれくらい前に登録していますか。
高島:  大体1カ月前に発売日を決めるのを目安にしようと頑張っています。