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事例紹介

Case

セミナー / 対談

光和コンピューター
第30回光和出版セミナー
出版社と書店を結ぶ新サービス
近刊情報マルチ登録サイト「K-PRO」
書店在庫補充支援サイト「たなづくり」

新聞記事の内容《PDF》 A4資料《PDF》

第30回光和出版セミナー
(出版社と書店を結ぶ新サービス)
「K-PRO」「たなづくり」
光和コンピューター(文化通信BBB 2018/11/26 掲載)

弊社社長 寺川光男

JPO 渡辺政信専務理事 版元ドットコム 沢辺均代表

 光和コンピューターは11月8日、東京・千代田区の出版クラプビルで第30回光和出版セミナー「出版社と書店を結ぶ新サービスのご案内」を開催した。セミナーには出版業界を中心に84社145人が出席し、二つの新サービス「K-PRO(ケイ・プロ)」、「たなづくり」についての説明が行われた。

 冒頭に同社・寺川光男社長があいさつ(別項)し、日本出版インフラセンター(JPO)・渡辺政信専務理事が「JPRO(JPO出版情報登録センター)」 第2フェーズについての説明を行った。渡辺専務理事は「2014年に総合的な書誌情報データベース『JPRO』を立ち上げ、取次会社やTRC(図書館流通センター)からの意見を受け、今年4月から実務面を重視した第2フェーズをスタートさせた。出版社の登録目的を見える化し、事前注文を取るための基本的な情報、最低限の項目があり、取次会社の新刊案内などに対応した内容紹介を送ることもできる。取次会社に搬入予定日などを連絡する仕組み、図書館営業向けの項目も設けた。さらに第2フェーズからはエクセルファイルでも情報が送れるようになった」と述べた。続いて、JPRO支援会社交流会座長の版元ドットコム・沢辺均代表が「支援会社を通じたJPRO活用の意義」と題して講演した。

 そのあと、光和コンピューターの久保田邦彦氏と小林修平氏が12月3日にリリースする近刊情報マルチ登録イト「K-PRO」の概要を発表(詳細は8面)。また、出版社・書店の業務を支援する共同サイト「たなづくり」について、ブッククリエイト・森和雄代表取締役が構想の経緯を説明し、光和コンピューターの小熊順一氏、多田元晴取締役がサービス内容を紹介した(詳細は9面)。

主催者あいさつ

 光和コンピューター・寺川光男代表取締役
 ビジネスモデルの転換、委託型から受託型の配本へ

 光和コンピューターは、約300社に出版社様向けの基幹シテムを提供しており、書店向けで言うと納品・返品データやPOSデータを約1000店舗からお預かりするとともに、POSシステムやバックオフィス、書籍検索システムを導入いただいているほか、出版業界の委託倉庫、取次業の方々にもサービスを提供しています。

 セミナー会場として使用しているこの場所、「出版クラブビル」は2014年1月に神保町への移転を決定し、約5年弱の時間をかけて本の町「神保町」にその姿を現しました。出版クラプビルには「日本出版クラプ「日本書籍出版協会」「日本雑誌協会」「日本出版取次協会」「日本出版インフラセンター」など13の出版業界の団体が一堂に会する拠点となっており、まさに出版業界のランドマークです。この場で第30回という記念すべきセミナーを開催できることを大変光栄に思います。

 一方で、出版業界は1996年の販売金額をピークとし、右肩下がりのグラフをずっと見続けてきました。どこまで下がるのか底の見えない状況が、出版業界における不安の元凶となっています。そんな中、コミックスに限って今年6月は、対前年比の売り上げがプラスに転じ、特に10月は対前年比4%増という報告が上がっています。コミックスの映画化、海賊版サイトの閉鎖、大手コミックス販元の値上げ、この三つがプラスの要因となったと報じられています。

 電子書籍に関しては、世の中から紙の本がなくなり、あらゆる本が電子化されてしまうのではないかという恐怖にも似た感情が業界にはあったかもしれません。しかし、書籍の販売冊数・金額の推移から見ると、やはり紙の書籍に愛着を持つ読者のニーズが根底にあると実証されているように思えます。

 出版業界の右肩下がりがどこかで底を打ち、そこから上昇に向かう時期が必要とされています。先日、大手取次トーハンの近藤敬貴社長が中部トーハン会で「投資に基づく物流コストの合理化」、「委託型の記本から受託費の配本への転換」を宣言しました。これはドイツにおける流通の在り方をベースにしたビジネスモデルに転換することを意味します。ドイツにおいては「ドイツ図書流通連盟」という業界団体の子会社MVBが書誌に関するデータを一元管理、受発注システムの業界インフラを担っています。

 日本の出版インフラがドイツと全く同じシステムになるとは限りませんが、ドイツでは早めに書籍情報の案内を行い、その情報に基づいて年に2回注文を受け、配本をするビジネスモデルです。ドイツ式のビジネスモデルに学んでいくことが返品率の低減、そして新たな日本における出版業界・出版産業の右肩下がりを改善していく道だと考えています。

 また、今はトランスビュー方式や出版社と書店の直取引など、流通の多様化が進んでいる状況です。出版業界が新たな上昇気流に乗るための一歩を築ければとの思いで、光和コンピューターは情報インフラの構築に取り組んでいきます。

本と人のかけ橋に

 近刊情報マルチ登録サイト「K-PRO」12月3日よりリリース

左から弊社 久保田部長、小林主事

 光和コンピューターは12月3日、近刊情報マルチ登録サイト「K-PRO(KOWA Publication Registry Office)」をリリースする。主な機能は①書誌情報、ISBNなどの書籍データ管理②「JPRO(出版情報登録センター)」へ自動登録③ネット書店への情報提供④FAXを使ったプロモーション⑤TRCへの送信でストックブック採用依頼、近刊情報へ掲載⑥書評掲載情報を表示⑦ネット書店の反映状況(提供予定)⑧出版ERPシステムデータ連携(提供予定)。

 「K-PRO」は図1のサービスで構成され、機能①~③は書籍のデータ管理など「JPRO」とほぼ同様のサービス内容で、第2フェーズの項目にも対応している。機能④~⑧が「K-PRO」特有のサービスとなっており、機能⑦と⑧のサービスは今後の提供を予定する。

 サービス価格は登録料が1万円(初回のみ)、月額費用が0点から10点で1000円、50点までが2000円、200点までが3000円、5000点までが4000円、1000点までが5000円、以降は1000点増えるごとに1000円が加算される(いずれも税別)FAXの送信費用は現在送信代行会社と調整中。

ソリューション営業部・久保田邦彦氏

 残念ながら近刊情報というものは、まだまだ業界に浸透、活用されていない状況です。近刊情報サービスは大変有効であり、近刊情報を活用することによって、業界のお役に立てるのではないかと考え、近刊情報マルチ登録サイトのソリューションを立ち上げ、本の出発点という意味合いを込めて「K-PRO」と命名し、本日発表させていただくことになりました。まず「K-PRO」はウェブシステムとなっており、「JPRO」との違いは本のデータ管理(JPRO送信)という観点、プラスアルファの付加価値サービスがあることです。」

 「K-PRO」のデータ管理(JPRO送信)は、基本的に「JPRO」で行えるサービス・機能を網羅しています。つまり、「K-PRO」に登録するだけで「JPRO」にもデータが同期され、各取次、TRC、書店、ネット書店にも配信されるのが基本のサービスです。付加価値のサービスとして「JPRO」では配信されない一部の受信者へ独自配信、またTRCに特化した情報を提供する機能を実装しています。これらの付加価値サービスが大きな特徴です。既に実装されている①~⑥の機能を中心に説明していきます。

ソリューション営業部・小林修平氏

 本のデータ管理についてポイントは3点、書誌情報(新規登録・項目編集)、JPROを含めた送信管理、書誌情報と締めたISBNの管理です。「K-PRO」は「JPRO」の第2フェーズに対応しており、さらに独自で管理項目を設けており、入力フォームが11カテゴリに分かれ、必須項目は赤字で記載し、送信先用途も明示しています。
主な書誌情報の送信先として「JPRO」へ1日2回送信するほか、独自の送信先にTRC(1日1回)、トーハン週報と日販速報(任意で送信、週1回)、e-honや紀伊國屋書店様などにも送信できます。

 TRCへの独自送信は仕入れ数の検討・『週刊新刊全点案内』の検討に使われます。「JPRO」経由でもTRCへの送信は可能ですが、「K-PRO」は内容紹介の字数が無制限となっており、より細かく濃い情報が送れます。もうひとつの違いとして「K-PRO」の画面から、販売数をストックブック販売レポートで閲覧することができます。

 続いてISBNの管理では、入力した書誌情報と連動しISBNの一覧が台帳の形式で表示でき、価格とCコード(分類コード)を入力してもらえばバーコードを出力することもできます。

 今回はFAX送信代行サービスと書評登録について紹介させていただきます。サービス名の通り「K-PRO」の画面上からFAXの送信依頼ができます。主な特徴は約7000店弱の独自書店マスタを使用することができ、ウェブ上で送信先の選択・管理、送信履歴の確認や再送信も可能です。

 書店名や都道府県別に抽出する機能もあり、例えば東京都の書店にまとめてFAX送信できるほか、市町村や店舗の規模で絞り込むこともできます。また、大学生協パックや人文系に強い書店を500店ほど選定したパックなど、送信先をウェブ上で完結できるようにしています。なお、マスタにない送信先は追加で登録・送信する機能を今後実装する予定です。

 「K-PRO」では書評掲載情報をデータベースに保持します。具体的には各新聞や雑誌に載った書評を入力、データベース化できます。また弊社で6大紙(読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞、産経新聞、東京新聞)の土日に載る書評をデータベース化していきます。データベース化された情報は「K-PRO」の画面から閲覧することが可能です。

久保田氏

 今後提供を予定しているサービスについて説明をします。
 ネット書店に近刊情報を配信したものの、情報がいつ反映されたのかということを版元様は気にされていると思われます。「K-PRO」のサービスを利用いただくと、近刊で配信している情報の一覧が確認でき、Amazonなど各ネット書店での近刊の反映情報を把握することができるようになります。

 現在、書評を有効に活用できる書店とつなげ、販促に使用するなど新たなサービスを検討しています。ポータル画面などでいつでも書店が新聞以外も含めたメディアの書評情報を閲覧でき、さらに掲載予定情報の入手などが可能となれば、より適正な補充発注につながるのではないかと思っています。

 また、出版ERPシステム(販売管理、制作管理など)や自社サイトの書誌情報と「K-PRO」のデータを連携させ、多重入力の解消をシステム面からサポートするサービスも予定しています。

11月より実証実験をスタート

 書店と出版社の情報共有、書店在庫補充支援サイト「たなづくり」

 光和コンピューターは11月より、文庫や定番商品情報を基にした効率的な棚作りを支援する情報共有サイト「たなづくり」の実証実験をスタートさせた。出版社や取次への発注など、書店業務がより類雑化していることから、書店の補充発注、出版社の出荷を支援する仕組みが必要と考え、補充支援と自動補充する「たなづくり」構想を立ち上げた。

 具体的には出版社と書店の業務・作業効率向上を目的とし、利用率向上のためにサービスを棚の補充に絞り込み、書店と出版社向けの共同サイトを目指すという。まずは文庫でサービスを開始し、さまざまな刊行物にアプローチをする予定だ。

 セミナー会場では「たなづくり」のデモンストレーションが行われたほか、紹介に先立ってプッククリエイト・森和雄代表が構想の経緯を説明。以前に平安堂(長野県)で業務システムを開発していた森代表は、「2001年に複数の書店の在庫を集めて出版社に見てもらう仕組みを作ったことがある。ネットで在庫を確認できる先駆けだったこともあり、大変好評だった。当時から注文や補充に活用できるのではないかと考えていたが、機能を実装する前にサービスが終了してしまった。書店がネットに在庫状況を登録し、出版社も注文の一覧表を載せ、ネット上で在庫と注文をマッチングする。そのような仕組みを光和コンピューターに提案した」と構想のきっかけを話した。

ソリューション技術部・小熊順一氏

 出版社では書店営業の人員減少などにより書店訪問による棚補充可能店舗数が減り、出版社と書店の間に棚イメージ(品揃え、陳列順など)の隔たりが生じています。さらに受注後の事務処理が煩雑化するなど、課題も見えてきました。

 一方で書店は棚を作っているプロフェッショナルが高齢化し、人員削減される中で、補充発注の業務が難しくなっています。文庫本定番商品では6~7%の欠品、特定のシリーズでは最大20%の欠品が発生したという話もあります。

 欠品率が増加し、そのまま購入されなかった場合は業界の機会損失です。足を運ぶ消費者も減っていくという悪循環に陥ります。これらの問題を解決するため、補充発注が簡単にできる仕組みとして「たなづくり」を提供していきます。

 さらに業務が煩雑化し、利用率が低迷しては意味がないことから、「たなづくり」では混乱を避けるため、棚の補充に絞った書店と出版社の共同サイトを構築しています。業務内容を絞り込むことにより他サイトとの差別化を図ります。

 書店が主導で補充発注するケース(図3)では、「たなづくり」を利用することで自店の在庫と出版社の補充一覧表を照らし合わせ、どの本が欠本するかをシステム上で把握することができます。

 また、ランキングや売り上げ状況を加味しながら、どの本が棚からの抜き取り推奨といった機能も併せて提供しています。出版社が主導で補充出荷するケース(図4)も全体的な流れは書店の補充発注と同様で、書店の在庫を出版社がチェックし、足りない本を補充出荷する業務をシステム化したものです。

多田元晴取締役

 最後に開発予定のサービスを紹介します。開発の構想から1年が経過し、その間、いろいろな書店から話を聞くと大きく3パターンで発注をしたという要望をいただきました。

 出版社から売れ筋のランキングをもらって自店の在庫と比較し、書店が主導で発注していきたいというパターン。逆に人手不足でどうしても書店で作業ができないということで、出版社主導で発注してもらいたいパターン。最後が定番商品を出版社と書店で決めて、売り上げからすぐに発注がかかる完全な自動発注パターンです。

 実はくまざわ書店とある出版社で、この企画を実施しました。機会損失がなくなったことで1年弱の稼働により、二桁合の対前年比を達成しています。目的買いの消費者が多い中で、目的の商品があるかないかで販売機会のロスをいかに減らせるかという実証結果だと思っています。

 定番商品の欠品期間をなくすため、出版社が売り上げ情報を把握することによって得られた結果です。単月の最高値では5割近い数字も出ています。自動補充の仕組みも開発に入っており、早急に対応していきます。

 出版社のシステム改修という意味では、自動補充に合わせた改修はかなりのコストが見込まれることから、委託倉庫の出荷依頼データという形で出力し、負担低減を検討していき、年明けにはサービスをリリースする予定です。