あかね書房
児童書出版のシステム活用
小フェアや単品需要の単品管理可能に
「出版ERP」システム 「販売管理システム」
株式会社 あかね書房 様 (文化通信bBB 2008/9/1掲載)
株式会社 あかね書房
創 業 | 1949年4月5日 |
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事業内容 | 児童図書出版 |
代表取締役社長 | 岡本雅晴 |
本 社 | 東京都千代田区西神田3-2-1 |
児童書と学校向け書籍を刊行するあかね書房は、営業面でデータの活用と、児童書出版で中心になるロングセラーの重版資料を作成することなどを目的に、今年7月に光和コンピューターのクライアントサーバーシステムを導入した。
オフコンからPCシステムへ
同社は長年オフコンを利用してきたが、「専任の担当者を置く必要があり、他の社員はデータが必要なときにいちいち担当者に依頼して資料を作る必要があった」と岡本光晴専務は言う。
一応、請求業務以外は担当者以外にも作業できるようにしていたというが、やはり突発的は事態に対応できないなど自由度が少ないという問題を抱えていた。
パソコンシステムへの移行は早くから検討してきたというが、オフコンの方が安定していたこと、費用が変わらないのならばという判断で利用を継続してきた。
しかし、オフコン担当の前任者が定年を迎えたことで、1人となった担当者への負担が増えたことや、営業部門から自由にデータを活用したいという要望が強くなったこともあり、1年ほど前に導入を決定。オフコンのリース期間の負担が少なくてすむようなタイミングで切り替えを行った。
増える小フェアの実績管理
児童書は春(新学期)、夏(夏休み)、冬(クリスマス・年末年始)の需要期に、セットを組んで展開するフェアが大きな山になるが、近年はこれ以外の時期にも数点の平台フェアなど細かい小フェアを提案することが多くなったという。
背景には書店の児童書担当者にパート、アルバイトが増え、出版社側が提案しなければならないという事情もあるようで、こうしたフェアの実績管理も課題になっていた。
これまで、フェアの販売集計は手作業で行っており、春夏冬の大型フェアはしっかりと管理できていなかった。また、管理の中身も書店ごとのセット数や全体の販売量を記録することはできても、書店別に単品の注文・販売管理を行うことは難しかった。
新システムでは小フェアでも、事前に登録することで単品管理が可能になり、個別書店のセット・単品の発注数を把握して実績をみることもできるようになった。
「小フェアが増えたことで、いちいち管理していないと重版の判断が難しくなった。新システムによって前年はこういう企画で出荷が増えたなど理由が把握できるようになったので重版に生かせるようになった」と岡本専務は話す。
ロングセラーの重版判断に活用
児童書出版はロングセラーが柱になっていることが多いが、同社でも1969年刊行の「ふらいぱんじいさん」(神沢利子著)が近く累計100万部に達するなど、既刊書の比率が高い。
そうなると、ロングセラーをどのタイミングで重版するかという判断は重要になる。小フェアが増えたり、単品の需要が多くなればさらに管理の必要性が増してくる。
「当社のような児童書出版は、まずロングセラーをきちんと固めて、あとはプラスして新刊から新たなロングセラーを作っていくことが課題です」(岡本専務)というモデルを維持するためにも、単品管理は欠かせないといえるだろう。
そのため、新システムでは重版検討用の資料になるように、単品ごとに使用予定、前年同期3ヶ月の出荷実績、在庫数が一覧になる画面を設計していた重版を、システムに慣れてくれば随時チェックできるようになるとみている。
在庫のリアルタイム管理も実現
また、委託倉庫にもパソコン3台を導入し、本社や大阪の営業所でもリアルタイムに在庫を確認することが可能になった。
さらに、各担当者が店頭フェアや採用品などでいつ頃何冊必要なのかという使用予定を設定することもできるため、在庫が少ないものでも即時、確実に出荷の可否が判断できる。
特に、学校向けの場合は、学校図書館での司書配置が進んだこともあって単品購入が増える傾向が強まっており、細かい在庫管理が要求されるという。
営業面での管理も強化
一方、書店の販売データはこれまでもPネット、日販「オープンネットワークWIN」、紀伊國屋書店Publine、そしてくまざわ書店や明屋書店などのWebで公開されているPOSデータを活用してきた。
同社は社員20人のうち営業担当者は東京と大阪で10人だったが、このほかに書店を回って促進するパート・アルバイトを全国に12人配置しているため、システムで書店の実績を把握することで、営業面での管理も強化できるとみている。
慣れれば業務の流れ見直しも
今回のシステム導入について、岡本専務は「オフコンに携わった人間が一線を退いていたため、システムに詳しい人間がいなくなり、システム設計段階でこちらの要望を伝えるのに苦労しました」というが、「そのことでシステムをどう使うのか勉強にもなりました」と話す。
そして、導入当初は「とりあえず今までの仕事のやり方をあまり変えないようにしましたが、今後、慣れるに従って相談しながら業務の流れも変えていきたいと思っています」と考えている。