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事例紹介

Case

出版システム専門書出版

美術出版ホールディングス
持株会社制移行を支える情報システム
多様な流通に対応していく

A4資料《PDF》

「出版ERP」システム  「Publishing ERP」
美術出版ホールディングス 様 (文化通信bBB 2008/12/1掲載)

株式会社 美術出版ホールディングス

設 立 2008年10月1日
業 種 出版業
資本金 6200万円
年 商 約42億円
事 業 持株会社、グループ企業のマネジメント業務、
グループ企業の事業コンサルティング業務
代表者 代表取締役会長 大下敦
代表取締役社長 大下健太郎
本 社 東京都千代田区神田神保町2-38  稲岡九段ビル8F
関連会社 株式会社美術出版社
株式会社美術出版サービスセンター
株式会社美術出版ネットワークス

 美術出版は今月10月、持株会社の美術出版ホールディングを設立し、出版部門、販売部門、携帯配信部門の4社3拠点に分かれ、従来よりも機動性がある組織に移行した。データ共有によるリアルタイムな損益把握やグループウェアを使った情報共有化などのシステムが、こうした新たな取り組みを支えている。

コンピューターの導入は1971年

 同社がコンピューターを導入したのは1971年と早かった。現在もシステムを担当する水越弘取締役ゼネラルマネージャーが入社した75年には、既に電算室があってオフィスコンピューターで販売・在庫管理を行っていた。

 当時の大下敦社長(現会長)の先見的な判断で導入したというが、まだISBNコードもなく、独自に作った6桁の商品コードで運用していた。しかし、コード管理が定着していたことで、その後のISBNコードにもスムーズに移行できたという。

 パソコンによるクライアントサーバーシステムへの移行も早かった。2000年に「不安はあった」(水越取締役)というが、当時はまだ30歳代だった大下健太郎社長の決断で決めた。

 「オフコンは融通が利かないが、ごまかしようがないという信頼感があった」(水越取締役)のに対して、まだパソコンでシステムを運営する出版社はそれほど多くはなかった。人の紹介で知った光和コンピューターも、まだいまのような全業務にわたるパッケージソフトはなく、同社がリクエストを出して手直しして行くという作業の中で現在の形に作り上げてきた。

持株会社化で情報共有化も

 同社が導入しているシステムは、販売管理、印税・原稿料管理、原価管理、広告管理。各担当者のパソコンでしか画面にその部門の入力項目が表示されないようにして、入力権限と閲覧権限を管理し、印税・原稿料は総務部、原価関連は制作部、書店などからの注文は販売部で入力している。

 また、今年10月1日の持株会社制移行に伴って、持株会社である美術出版ホールディングスと編集・制作を中心とした美術出版社(神保町)、販売部門である美術出版サービスセンター(市谷本村町)携帯向けコンテンツ配信などを手がける美術出版ネットワークス(西神田)の4社3拠点体制となったことで、拠点間の情報共有化が課題になった。

単品・部門の損益をリアルタイムでつかむ

 これまで、各システム間の情報連携はあまりとっていなかったが、これを機に、美術出版サービスセンターのサーバーに販売管理システムを導入し、1日1回のバッチ処理で、神保町オフィスのサーバーと情報を共有するようにした。これによって販売データと原価データをぶつけ合って損益を中心とした商品の単品管理が可能になった。

 物流を委託している河出興産との間も、かつてはお互いに別々に在庫管理システムを運営していたため、在庫情報にズレが発生するなどの問題があったが、3年ほど前に河出興産の在庫データに一元化することによって在庫情報の整合をとるようにした。

 このときは、光和コンピューターのシステムを導入し、河出興産に物流委託している他社の例を参考にしたという。

 光和コンピューターは出版業界に特化し、比較的多くの出版社が導入していることで「同業他社が使っているので参考にできることも多い」(水越取締役)というメリットもある。

重版の精度も向上

 販売データの収集はPネットのスタート時から加盟するなど、これまでも力を入れてきた。これに学校採用、電話・FAX注文のデータを合わせて、季節要因に合わせた重版のタイミングや在庫量の管理を行っている。

 そして、単品での損益管理が可能になったことで「その時点で重版する価値があるかどうかがコスト面を含めて営業部門で判断できるようになった」(小海氏)という。

直販管理を”サービス”の発想に転換

 これからの課題は、「流通がどう変わっていくか。それに適応していくこと」と小海氏はいう。もともと同社は取次・書店ルートの他に、美術館や学校などの事業者、そして個人への直接販売も行ってきたが、いまは直接販売の割合が上がっている。

 「書店だとどうしても返品がある。実売を上げるために、規模は小さいがエンドユーザーへの直接販売で行ってきた直販管理を営業部に移行し、注文から代金回収までという発想から「いかにお客様が買いやすい仕組みをつくるか」(小海氏)というサービスの発想に切り替えた。

 また、教材の卸販売部門を担ってきた美術出版デザインセンターと出版営業部門がともに美術出版サービスセンターに統合されたことで、「書店営業と画材営業のノウハウを融合していく可能性がひらけた」(小海氏)ともいう。

分社化で夾雑物のないコミュニケーション可能に

 また、拠点が分かれたこともあって、部門間で意思の疎通がとりにくくなるという不安もあったというが、「むしろ編集と営業は夾雑物のないコミュニケーションがとれるようになった」(小海氏)という。

 同社ではサイボーズのグループウェアを導入して、社員個々のスケジュールから、経費清算、稟議までネットワーク上で行っている。「はじめは抵抗もあった」(水越取締役)というが、現在では「むしろ情報を共有することで仕事の自由度が増した」という。

 出版社からこうした発想は出にくいように思われるが、同社が2000年に立ち上げて成長を続けてきたモバイルコンテンツ事業部(現美術出版ネットワークス)の仕事の仕方が参考になったという。

 そしてこうした情報基盤を作った上での分社、複数拠点化は「むしろ仕事の棲み分けが否応なくできて、誰の責任か曖昧だったものが明確になり、自分たちの仕事も特化されてやりやすくなった」(小海氏)、「予算、計画もしっかり立つようになった」(水越取締役)という効果をもたらしている。