CCCメディアハウス
厳密な原価管理の省力化を実現
数多い海外出張に対応した経費精算
出版ERPシステム
(販売、原価、印税、経費精算など)
CCCメディアハウス様(文化通信bBB 2015/1/26 掲載)
㈱CCCメディアハウス
代表者 | 中西一雄 |
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資本金 | 1000万円 |
所在地 | 〒153-8541 東京都目黒区目黒1-24-12 |
電 話 | 03(5436)5701(代表) |
CCCメディアハウス(旧阪急コミュニケーションズ)は7年前に販売、原価、印税、経費精算など光和コンピューターの「出版ERPシステム」を一括導入し、2013年には電子書籍印税管理システムの利用も開始した。書籍1点ごと、雑誌は号数はもちろん記事・特集単位での徹底した原価管理を実施する同社だが、現在のシステムで管理の手間は大幅に軽減されたという。
昨年10月に現体制に
同社は2003年にTBSブリタニカの事業を統合し、阪急グループの「阪急コミュニケーションズ」として発足。さらに2014年10月1日に、新会社CCCメデイアハウスが宝塚歌劇関連事業とフリーペーパー事業を除く出版事業を承継し、カルチュア・コンビニエンス・クラブが100%出資した現在の体制になった。
『ニューズウィーク日本版』『フィガロジャポン』『ペン』の雑誌3誌を発行しているほか、年間に書籍約60点、ムック12~13点を刊行する。
オフコンからパソコンへ
現在のシステムは2008年,4月に導入した。それまではオフコンを使っていたが、すでに主流になっていたパソコンを利用したシステムに切替えることが目的だった。
「かつてのシステムはデータを会計システムに入れるために、販売データを締めるスケジュールを決めて、保守管理をお願していた業者にバッチ処理をしてもらっていました」と総務局経理部・柳涼子部長はオフコン時代の融通のきかなさを回想する。
導入したのは、販売管理、印税管理、資材原価管理、個別原価管理、経理処理のX-Payment(クロスペイメント)など。広告と会計を除いたすべての基幹システムを「出版ERPシステム」で構成した。
さらに、導入5年目に行ったリプレイス時に、当時、拡大し始めた電子書籍の売上集計と印税支払いを処理するための管理システムも導入した。
物流業務はOEC商品管理センターに委託
同社は物流業務をOEC商品管理センター(OEC)に業務委託している。書店などからの受注は、FAXか1日1回のデリバリーでOECに送り、OECで入力して納品伝票を作成し、取次に納品している。納品・出荷・返品などのデータは、OECから毎朝、前日分のデータが届き、販売管理システムに取込む。
日常的な在庫確認は、リアルタイムに更新されるOECのウェブサービスを利用しており、1カ月に1回、OECの在庫データと販売管理システムの理論在庫を照合している。
海外出張に合わせて電子書籍印税管理導入
X-Paymentは、社員の立て替えや出張といった経費精算や外部への支払などに利用しているが、経費精算は原則として全社員が自分のパソコンの画面で入力する。
海外提携誌を発行する同社は、海外出張が多いという特徴がある。雑誌編集部の海外取材など年間で40~50件に達し。しかも、取材は訪問国が多岐にわたり、一度の出張で数ヵ国を回ることもある。
このため、X-Payment には外貨のマスタを登録し、「伝票は1回の出張で5通貨ぐらいは対応できるようになっています」と事業管理局・邨谷幸江さんは述べる。
また、かつては残った外貨を管理部門が預かっていたというが、仮払い残高をシステムで処理するようにしたことで、「外貨は帰国時に各自が両替して日本円で精算するルールにしました」(柳部長)という。
書籍は1点ずつ、雑誌は号ごとに原価管理
X-Payment での編集経費入力は、書籍は1点ごと、雑誌は号数から特集・記事単位で入れられるようにしている。
ここで集めた経費データと、用紙や印刷・製本などの費用を管理する資材原価管理システム、そして印税管理システムのデータを集約して個別原価管理を行っている。
編集人件費も、書籍であれば編集部単位で配賦率を決めて書籍ごとに分配。これにより、1点ごとの人件費・間接費も含めた原価管理を可能にしている。
雑誌についても「号ごとにかなり厳密に管理しています」(柳部長)という。原稿料やカメラマン、デザイナーなどへの支払、編集経費などを、特定できるものは各号、特集、記事単位で入力し、特定できない経費は「共通」項目で入力する。
承認された経費のデータは、翌朝には権限を持った担当者が確認できる。各編集長も「毎月号単位で、要望があればさらに細かく確認することもできます」(総務局局長付・関麻千子さん)という。
市場拡大に合わせて電子書籍印税管理導入
電子書籍の印税管理は、取引している電子取次から毎月来る売上報告を取り込んで、著者、電子書籍別に集計し、X-Paymentに送ることで支払を実行する。
ちょうどシステムのリプレイスを行った2013年は、前年にアマゾン「Kindle」、楽天「kobo」が本格的なサービスを始めたこともあって、電子書籍の販売量が増え始めた時期だった。
「それまでは伝票で1カ月40~50行ほどだったので手作業で対応できましたが、この時期、作業量が爆発的に増えたという印象があります」と柳部長は振り返る。
システム化によって、集計作業などは軽減され、市場の拡大に対応できるようになった。しかし、電子取次からの売上報告の時期がまちまちで、データの様式も統一されていないため、管理部門でデータを整形して取り込まなければならない。
さらに、著者への支払いはX-Paymentに自動的に連携して行い、支払調書を作成できるが、翻訳書の場合は版権工ージェントに売上報告を行い、エージェント側から請求が来るという流れがあったり、紙と電子を合わせた報告が求められたり、アドバンスの残高計算が発生するといった違いがあるため、管理が自動化できないという課題もある。
現在、各システムのOSを最新版に切り替える作業を進めているが、これからも新しい環境に合わせて、柔軟にステップアップを進めて課題をクリアしていくことになる。