技術評論社
クラウドシステムで業務の効率化を実現
出版ERPシステム
技術評論社(文化通信BBB 2020/4/6 掲載)
株式会社技術評論社
代表者 | 片岡巌 |
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所在地 | 東京都新宿区市谷左内町21-13 |
設 立 | 1969年3月 |
資本金 | 3000万円 |
電 話 | 03-3513-6150(販売促進部) |
コンピューター書のイメージが強い技術評論社は近年、ビジネス書など一般書分野でも勢いが出ている。このところの新型コロナウイルス感染拡大でも、細菌、ウイルス、パンデミックなどを扱う既刊に注目が集まっている。こうした出版活動を支えるのはクラウドで運用するシステムだ。
電気機械からPC、ビジネスへと展開
同社は1969年春に創業し、当初は電気機械系の理工学書を刊行していた。1980年代からコンピューター書の刊行を増やしてきたが、さらに近年はパソコン書を中心にしつつも、ビジネス書、理工書、実用書などの分野でも書籍を刊行。中でもビジネス分野の拡大は大きな流れになっており、現在は月刊誌『SoftwareDesign』を発行するほか、書籍を年間350~400点刊行している。
ビジネス分野は、ビジネス棚でも置かれるExcelなどのパソコン仕事術書に始まり、6年前に刊行したPC書『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』をリニューアルし、新型コロナの影響もある3月4日発売にも関わらず3刷と好調に推移。近年はシリーズ累計22万部に達する「問題地図シリーズ」のようなビジネス書も増加している。
そんな中で、初級解説書として昨年11月に刊行した『60分でわかるSDGs超入門』は、書店の「SDGsフェア」の効果もあって年末から年明けにかけて売れ行きを伸ばし、3万部に達した。
さらに、新型コロナに関連して既刊の『ずかん細菌』、『ウイルス・細菌の図鑑-感染症がよくわかる重要微生物ガイド』が再注目。『パンデミック・シミュレーション-感染症数理モデルの応用』は表紙をリニューアルした上で11年ぶりに増刷をかけて展開している。
数字の一元化が新システム導入の目的
現在の情報システムは、光和コンピューターの販売管理、訪問管理、資材原価管理、予算実績管理、印税管理と、情報分析のためのビジネスインテリジェンスツールをクラウド(MicrosoftAzure)環境で利用している。
このシステムは2011年に以前のオフコンシステムからのリプレースで導入したが、そのときの目的について編集局情報管理推進室の小坂浩史氏は「販売データをはじめ、社内で取り扱う数字を一元的にデータベース化し、さまざまな分析に利用すること」だったと話す。
以前のオフコンシステムは販売管理のみだったため、販売以外は、PC用のオフィスソフトを使って各部署がそれぞれデータを管理していた。
そのため「部署間のデータ連携はおろか、販売システムから納返品などのデータを取り出すことすら、外注のSEさんにお願いしていました。データの基本となる書籍のマスターデータも、各部署がそれぞれのシステムに別々に入力していました」(小坂氏)という。
こうした点を改善するため複数のシステム会社の提案を受けた。その選定過程で、システム要件の洗い出しを進めるとともに、同業他社が使っているシステムなども調査。既成のパッケージをかなりカスタマイズする必要があることが判明した。「その点に最も対応していただけそうなところとして、光和コンピューターさんのシステムを選びました」と小坂氏は述べる。
UIにこだわる社員に対応
導入にあたっては、まず業務の核となる販売管理システムの開発と実運用を目指し、販売システムが稼働した後、他のシステムを順次稼働させていった。
導入時の苦労としては、コンピューター書の専門出版社だけに「当社にはユーザーインターフェイス(UI)の見た目に非常にこだわる人が多かったので、その調整に苦労しました」と小坂氏。
いま、編集部門の一部を除くすべての部署でシステムを使い、社員のほぼ半数が何らかの形で利用している。
スタート地点に立てた
新システムの導入によって、以前はそれぞれの部署で管理していたデータ入力作業の重複はほぼなくなった。また、分析や業務のために多用な形式のデータを取り出すことも容易になった。
こうした改善によって、以前に比べて分析できる情報が格段に増え、売り上げから配本の予測、企画立案に利用したいデータへのアクセスが容易になった。「分析システム自体をこれから構築、改良していく余地は大いにありますが、以前はそのスタート地点にすら立っていませんでした」と小坂氏。
販売面でも、「販売実績や受注状況など販売促進に必要なデータに容易にアクセスできるようになったことで、効率的に仕事を進めることが可能になりました」という。
新システム導入の目標で達成されたことは、「今のところ半分くらいでしょうか」と小坂氏。
当初はすべてのデータを自動的に任意の形にカスタマイズできることを目指したが、業務によってはデータ形式の整合性を取るのが難しく、データを一度確認、手直ししてから次の工程に流し込む作業の必要があるという。
今後、こうした点を改善しながらますます効率的に業務を行える環境を整えていくことを目指している。