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事例紹介

Case

出版システムコミック系出版

一迅社
「データをうまく活用しなければ伸びない」
指定配本に向け書店実績の管理も

新聞記事の内容《PDF》 A4資料《PDF》

書店情報管理システム《出版ERP:データ分析》
株式会社 一迅社 様 (文化通信bBB 2008/10/6 掲載)

株式会社 一迅社

本社所在地 東京都新宿区新宿2-5-10 成信ビル8F
創 業 1992年(平成4年)8月
代表者 代表取締役会長 原田 修
事業内容 雑誌・書籍の出版など
資本金 1000万円
社員数 60名(2008年6月現在)

 ゲームコミックやコミック雑誌を刊行する一迅社は、創業から16年で年商30億円を突破、この不況下でも二桁成長を続けている。コミックの世界で一定のブランドを確立した同社は、今年、新たに文庫2レーベルを刊行した。
 新システムを導入し、指定配本に向けた書店管理、新たな人事制度の導入など、もう一段高いステップに向けた投資を行っている。

売上高は30億6000万円に

 同社は1998年に「DNAメディアコミックス」を創刊して出版活動を本格的に開始した比較的若い出版社だ。全身は92年に少年コミック誌の編集を目標に創業したプロダクション有限会社スタジオディー・エヌ・エーで、2005年には杉野康介氏が設立した一賽舎と合併し、社名を一迅社に変更した。

 スタジオディー・エヌ・エー時代からゲーム系コミックを中心に出版活動を行ってきたが、コミック雑誌4誌と、月間30点のコミックを刊行。さらに、今年5月にはライトノベルレーベル「一迅社文庫」、そして7月には少女向けライトノベルレーベル「一迅社文庫アイリス」を創刊、毎月合わせて7点余を発売している。

 売上高は2005年が15億1900万円、2006年が24億3200万円、そして2007年7月期が30億6000万円と30億円を突破。出版産業全体が停滞する中で、なんと前年比12%増の成長を達成するなど、「エンターテインメント総合出版社」に向けて成長を続けている。

伸びる分野として書店も注目

 成長の背景を同社・糸井毅取締役営業部長は次のように説明する。「元々ゲームコミックがヒットしてコミック専門店などで定着していたが、当初は大ヒット作数本に支えられていた。それが、一般の書店でも認知され、販路も広がりコミックス全体の力がついてきた」。

 同社の営業活動が功を奏したことは確かだが、その一方で売り上げが低下する一般の書店から、売り伸ばす余地が大きい分野として注目されたということもあったようだ。

 今回、光和コンピューターのシステムを導入したのも、こうした販路拡大への対応という目的があったという。

 同社は在庫の管理や出庫といった物流業務を、出版倉庫業者の大村紙業に委託している。大村紙業では日々の在庫の動きを出版社に伝えるためのWebサービスを行っており、在庫や入出庫はほぼリアルタイムに把握することができる。同社でもこのWebサービスからCSVでデータを取り込み、EXCELなどを使って情報分析したり、取次への請求書発行を行ってきた。

 しかし、コミックスのアイテムが増えたことや、文庫市場への参入が予定されていたことから、より迅速で詳細なデータ分析が必要になった。

 「それまでは倉庫のデータとPOSデータを別に加工して合わせて使っていたが、やはり自前のデータをしっかり持って、そこから分析していかなければならない」と糸井部長はいう。

書店情報管理システムで指定配本も

 システム導入については昨年春から打合せを始め、これまでに「販売管理システム」「印税料支払いシステム」「原価管理システム」がほぼ稼動した。大村紙業のデータを毎日自動的に取り込み、請求書発行の手間は相当軽減されたという。

 さらに、書店の実績管理や販売データを詳細に分析できる「書店情報管理システム」の導入も進めている。

 これまで7年ほどPネットでPOSデータを収集してきたが、しっかりした分析システムがなかった。今回は光和コンピューターに希望を伝え、エヌジェーケー社のデータ分析ソフト、“簡単操作のBIツール「DataNature/E」”を利用した自由度の高いシステムを開発している。

 これにより「販売データだけでなく、倉庫のデータなどいろいろなデータを加えて分析できるようになる。あるタイトルの月間出荷・返品と実売を比較したり、グラフ化することで需要予測ができる」という。

 糸井部長は「重版の判断もあるが、近いうちに指定配本できるように書店の実績管理をする」とその目的を話す。そのために、今後は日次のPOSデータも取り込む計画だ。

売ろうとする書店を見つけて伸ばして行く

 こうした取り組みの背景には「データをうまく活用しなければ伸びることはできない」という思いがある。特約店は350店に拡大し、「専門店に対しても、他社よりも定期的に拡材などを提供してきたと思う」という同社の営業姿勢を支えるためにも、情報管理が欠かせないというわけだ。

 「委託制度の中で、当社の商品がどこに陳列され、どんなお客さんが買っているのかわからない。取次任せの配本だけでは返品のロスも大きい。やはり売れる、売ろうとしている書店を見つけて、そこをいかに伸ばしていくかが重要」と糸井部長は考えている。

人事制度の見直しとも連動

 また、システム導入には人事制度の見直しというもう一つの目的もあった。従業員はアルバイト5人を含めて60人に達し、刊行点数も、年間で400点近くになっている。社員個々の評価も、それぞれのコストを管理してどれだけ利益面で貢献したのかという判断をする必要が出てきている。

 今回導入した「原価管理システム」は、アイテムごとにその時点での収支をみることができる。また、部門や編集者個人での目標管理も可能になる。

 急成長を続け、ラインナップの拡大を続ける同社にとって、システム投資は決しておろそかにはできない必須事項だといえる。