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事例紹介

Case

出版システム新聞社系出版

岩手日報社
40年ぶりに「出版物管理システム」を刷新

新聞記事の内容《PDF》 A4資料《PDF》

出版ERPシステム
(出版物管理システム)
岩手日報社(文化通信BBB 2020/2/3 掲載)

岩手日報社

設 立 1938年(昭13)6月29日
資本金 2億円
代表者 東根千万億
所在地 〒020-8622
岩手県盛岡市内丸3-7
電 話 019-653-4111(代表)

 岩手県紙「岩手日報」を発行する岩手日報社。本業の新聞発行とともに、地元に根ざした出版事業も長く続けている。2011年3月の東日本大震災では、同年6月に『特別報道写真集 平成の三陸大津波』を発行。当時、県内外の多くの人が買い求めたが、今もなお売れているという。また、近年では大リーガー大谷翔平選手など、県内出身のスポーツ選手が数多く活躍。彼らに関する出版物もまた、全国的なヒット作となっている。そんな岩手日報社はこのほど、光和コンピューターの「出版物管理システム」を導入。昨年10月の消費税増税にあわせて稼働した新システムは、約40年ぶりの刷新となった。

 同社が出版事業を始めたのは1963(昭和38)年から。60~70年代は『岩手年鑑』(09年に廃刊)の発行が中心で、出版点数も少なかったという。80年代は出版点数を増やし、事業を拡大。80年に定期刊行出版物として文芸誌『北の文学』を、85年から甲子園大会終了時に『高校野球グラフ』を発行。17年から『いわて高校野球ファイル』とタイトルを変え、出し続けている。

 そして、11年の東日本大震災は出版事業でも大きな出来事だった。発生から間もないその年の6月に『特別報道写真集 平成の三陸大津波』を発行。地元新聞社だからこそ撮影できた津波襲来の連続写真をはじめ、沿岸市町村の姿を克明に記録した。

 総合メディア局コンテンツ事業部・小原正明部長は「地元書店などで、何冊もまとめて買う人の姿があった。県外の人に配ったりしていた」と当時を振り返る。この写真集が、同社のこれまでのトップセールスの出版物になっている。なお、同社は11年度の新聞協会賞編集部門の写真、企画両部門をダブル受賞した。

「新聞社の出版業に対応」を重視

 同社がシステムによる出版管理を始めたのは、79年頃に「オフィスコンピュータ(オフコン)」を導入した時から。地元のコンピューター会社に委託開発してもらい、それ以来、それをベースに改良を重ねて長年使用してきたという。今回の新システム導入は約40年ぶりとなる。

 システムの老朽化や業務面の改善などを目指し、19年10月の消費税増税にあわせて、新たなシステムを導入できるように、17年から選定を開始した。2社の提案を受けたうえで、18年9月に光和コンピューターに決定し、予定通り19年10月から本稼働となった。

 今回のシステム選定で重要視した点は、⑴取次店の販売管理に正確に対応できること⑵新聞社の出版業に対応していること⑶「定期購読管理」の機能を有していること⑷「ERP」により必要な機能のみが選定でき、導入コストを削減できること―。

 総務局経理部・伊藤大基専任部長は「当社の出版物は8割方が取次店に販売委託している。出版売上の正確な計上を行うためには、出版業界特有の商慣習に対応する必要があった。そのため、新システム導入時から従来の出版売上の計上方法を変更している」と説明する。また、「同業他社が多数導入しており、信頼性が高い」ことも大きかったようだ。

 総合メディア局コンテンツ事業部の横田真紀氏は、実際に今回の新システム移行の業務を担った。「これまでは納品ベースで売上を立てていたが、新システム移行で実際の売上で収入を立てる形に変わった。従来の考え方、やり方を全く変えなければならなかったのが、最も苦労した点」と話す。

 ただ、光和コンピューターが他の新聞社のシステムも手がけているため、「例えば、新聞販売店とのやり取りでこういった請求書がほしいとか、細かい相談にもすぐに理解し、応えてもらえた。データ移行時も要望に細かく応えてもらい、スムーズだった」と評価する。実際に「これまで手作業で二度手間、三度手間でやっていたことも、一つの作業で済むようになったのは大きな変化。現場ではかなり時間的、労力的にも楽になっている」と光和コンピューターの柔軟な対応などに感謝しつつ、今後もより良いシステムに改善していけるよう相談していきたいとしている。

全国的に売れるコンテンツ

 伊藤専任部長も「今回の新システム移行が業務改善や効率化、ひいては『働き方改革』にもつながっていく」と期待する。同社の出版事業を担う総合メディア局コンテンツ事業部は、前身の出版部から19年春に組織変更。今では出版事業のほか、著作権など知的財産権の管理、商業データベース、外部への記事提供などを担当する部署になっている。

 出版事業だけ見ても、今後の期待が大きい。毎年の年間発行点数は10冊程度で、近年では児童書など扱う本のジャンルも増えるとともに、地方紙の出版事業では珍しく全国的に売れるコンテンツを持っているのも、特徴だ。

 岩手県出身メジャーリーガーの大谷選手(エンゼルス)と菊池雄星投手(マリナーズ)は、地元新聞社ならではのコンテンツを満載した本を出版。全国で売れているという。小原部長は「せっかく県外にも市場が広がるような素材を持っているので、どんどん広げていきたい」と意気込む。17年秋にリニューアルした自社の書籍案内サイトからの注文も多い。

 また、昨年のラグビーW杯終了後すぐに出した『ラグビーワールドカップ2 0 1 9 岩手・釜石開催報道記録集KAMAISHI SPIRIT』も、今でも県外のラグビー会場などで売れば、またたく間に売り切れるほど人気だ。

 新刊の紹介などは、ツイッターをメインにPRしている。「流通のメインは県内だが、ネットやSNSで広まって、全国から注文が来るようになった」(横田氏)。今年も地元の大船渡高校出身で、プロ野球ロッテにドラフト1位で入団した「令和の怪物」佐々木朗希投手がデビューする。今後も、同社発行の本が全国で話題になりそうだ。