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事例紹介

Case

出版システム専門書出版

ミネルヴァ書房
専門書出版社として
「必要最低限のシステム」目指す

新聞記事の内容《PDF》 A4資料《PDF》

出版ERPシステム
(販売・定期・印税・原価管理)
ミネルヴァ書房(文化通信BBB 2019/3/25 掲載)

(株)ミネルヴァ書房

代 表 杉田啓三
所在地 〒607-8494
京都府京都市山科区日ノ岡堤谷町1
電 話 075-581-5191(代表)
創 業 1948年(設立:1952年)

 京都に本拠を置く人文・社会科学系出版社のミネルヴァ書房は、2018年に長年利用してきたオフコンシステムから、光和コンピューターが提供するパソコンをベースにした出版ERPシステムに移行した。40年ほど前に自ら主導してコンピューターシステムを導入したという杉田啓三社長=写真=は、「システムは必要最低限でいい」という考えで今回の新システム導入も推進した。

創業70周年迎えた専門書出版社

 同社は1948年に杉田社長の義父・杉田信夫氏が創業し、昨年70周年を迎えた。社員数は約50人、男女比はほぼ半々で、20~30代の若い社員も多い。

 大学教科書と学術専門書を中心に、哲学・思想、歴史・地理、政治・法律、経済・経営、心理、教育、福祉・保育、社会、文学・児童書と幅広い分野で出版活動を行っているが、特に社会福祉や心理に強みを持つ。

 現在は京都本社と東京の2拠点体制で、岩崎学術出版社、昭和堂という出版社もグループに迎えている。

旧システムの提供停止で入れ替え

 新システムの導入は、それまで利用してきたシステムのメーカーが、出版システムの提供を止めることに伴って必要となった。今回導入したシステムで、ハードウエアはオフコンからパソコンに移行したが、販売管理、定期購読管理、印税・支払管理、原価管理と、基本的には従来のシステムで処理していた内容を引き継いでいる。導入の決定から2018年10月の本稼働まで1年半ほどの期間は要したが、「いまは安定して動いています」(杉田社長)という。

杉田社長が自らシステムを導入

 同社がコンピューターシステムを導入したのは、専門書出版社としては早い1970年代後半だった。このとき、導入を進めたのが、1976年に編集者として入社した杉田社長自身だった。

 「それまで売れ行きベストを出すのに、熟練の女性社員が出庫伝票を見て『正』の字を書いて集計していました。そのため情報は1カ月遅れ。これでは情報を役立てられないと、コンピューターの導入を進めたのです」と杉田社長は当時を振り返る。

 システム導入に向けて、当時の杉田社長は地元京都はもちろん、専門書取次だった鈴木書店の紹介で、東京の中堅出版社なども訪問した。

 「参考になる例も多かったのですが、システムで大量の資料を出しても使えていないといった失敗例や課題も見えてきました。当社の場合、データ分析といってもある程度推定できていたので、システムは片手間で作業できる最低限の機能でいいと考えました」と方向性を決定。この考え方は、いまのシステム導入でも変わっていないという。

 旧システムは5年のリース契約で8年間使用するなどしながら、40年間にわたって使い続けてきた。この辺りにも、杉田社長の堅実な姿勢が見える。その間のリプレースから数えて、今回の新システムが5代目となる。

刊行点数増加で流通業務を拡充

 杉田社長が入社した当時、同社の新刊刊行点数は年間80~100点だった。この頃は、在庫管理も出庫・返品も・本社(現1号館)ですべて行っていた。

 しかし、その後、杉田社長が中心になって積極的に書籍を刊行するようになり、点数は年問250~300点に増加した。

 そんな折、本社隣の物件が空いたことから、2003年に倉庫機能も持った2号館を建設。いまもここで採用品の出庫作業を行っている。さらに、隣接する家屋が空いたことから、3号館、4号館と広げ、グループ会社などをこの地に集約した。

 一方で、数年前には東京の出版倉庫業社のワタナベ流通に大半の物流業務を委託。取次向けの出荷業務のほか、アマゾンジャパンの流通センターへの直接納品も任せている。

確実な販路の拡大図る

 現在同社の主な販路は、大学教科書などの採用品が約40%に対して、取次・書店ルートが約60%。この比率は以前と比べて逆転しているといい、杉田社長は市場環境が厳しい中で、むしろ以前の教科書6対市販4の比率に戻したいと考えている。

 「以前は新刊1対重版2ぐらいだった比率も、いまは1対1ぐらいです。書店ルートの配本条件がますます厳しくなるなか、専門書の出版社として教科書を増やすなどして自衛しなければなりません。アマゾンとの取引にもその意味があります」と杉田社長は述べる。

 採用品を強化するためには、「しっかりした内容の本を作ること」が大切だと杉田社長は述べる。自ら編集者としてこの分野での実績を積み上げてきた杉田社長は、そうすれば、大学教科書での自社の占有率を広げる余地がまだまだあるとみている。

 さらに、この分野を拡大するためには、著者となる研究者の業績に直結する専門書の刊行を充実することや、ブランドを強化するため「日本評伝選」のように、専門的な内容ながら広い市場をターゲットとした人文・社会学系の教養書の刊行も重要だという。

200点に達する「日本評伝選」「世界評伝選」も始動へ

 「日本評伝選」は今年9月には200点目を刊行する予定で、さらに400点まで企画はあがっている。「1000点は目指したい」(杉田社長)と、事業としても柱に育った。また、今年中には「世界評伝選」の刊行も開始する計画だ。

 そして、著者を開拓する上で「東京の出版社とはハンディがあります」と考える杉田社長は、東京の編集機能を拡充し、京都本社と編集者が切磋琢磨する体制へと変えつつある。

 それでも「軽いものは作りませんし、粗製濫造はしたくない」という杉田社長。システムも「必要最低限」を守りつつ、質を重視する堅実な出版活動での発展を目指している。