1. HOME
  2. 事例紹介
  3. システム内容別
  4. 出版システム
  5. みすず書房新刊の収益管理が重要に

事例紹介

Case

出版システム専門書出版

みすず書房
新刊の収益管理が重要に

新聞記事の内容《PDF》 A4資料《PDF》

「出版ERP」システム  「販売管理システム」
株式会社 みすず書房 様 (文化通信bBB 2008/7/28掲載)

株式会社 みすず書房

社 長 荒井 喬
所在地 東京都文京区本郷5-32-21
社員数 19名(2007年3月現在)
創 業 1946年 (会社設立 1947年9月1日)
資本金 1,000万円

 人文系の書籍出版社として知られるみすず書房は、02年に光和コンピューターの販売管理、印税、支払管理、原価管理の3システムを導入したが、市場環境が変化する中で、新刊部数の決定や月々の新刊の成績を確認するなど対応に役立っているという。

 同社は以前、出版社向けの基幹パッケージソフトを導入していたが、データ容量が少なく複数年のデータを保存できなかったために、常備データなどを別に保存してつき合わせて処理するなど手間がかかっていた。また、各種データを書き出すことができず、帳票でしか出力できなかったために使い勝手が悪かったという。

 光和コンピューターとは展示会での出会いから接触がはじまったが、「統合型のシステムに魅力を感じた」と持谷寿夫専務はいう。01年には導入に向けた準備に入ったが、ちょうど同社にとっても重要な取引先だった専門書取次の鈴木書店が破綻するという事件が起こり、販売管理システムの稼動は翌年にずれ込んだ。

全てのデータをCSVで書き出して活用

 導入に当たって、持谷専務が依頼したのは各担当者が自由にデータを書き出して分析できる機能だった。その結果、販売データからマスタなどほとんどのデータをCSV形式で書き出し、各自が加工できるようになった。

 それぞれがAccessで作ったサブシステムに抽出したデータを流し込むことで、売れ行き良好書の注文書を作成したり、常備の商品回転率を出して常備更新に活用するといった業務が可能になっている。

自社倉庫とはオンライン接続

 また、千葉県野田市に400坪の自社倉庫を借りているが、ここにも担当者1人と端末1台を配置して、東京・文京区の本社からオンラインで出庫指示すると翌日には倉庫から商品が届き、取次の集品便に乗せることができる。

 VANによる発注は伝票を自動生成できるため、倉庫からは商品と伝票が送られてくる。

 現在、年間70~80点の新刊を出し、稼動点数は1000点余だが、自社管理によって数冊単位の在庫を出荷するなど細かい対応が可能だという。

変化した単品データの活用方法

 同社は60年代からスリップを回収して単品管理を行い、業界でいち早く科学的な根拠に基づく書店への販売促進を行ったことで知られている。人文会の代表幹事も勤めた元同社の相田良雄氏の元で、会社更生法からの再建に取り組んでいた筑摩書房の営業メンバーが単品管理を学び、現在のPOSデータを活用したマーケティング手法を生み出したこともよく知られている。

 そういう意味で、同社が販売管理システムを導入して、単品分析を行うのは自然な流れのように思えるが、持谷専務は「いまは書店も他の出版社も単品管理を行っており、対書店戦略として単品データを活用することが難しくなった」と話す。

 ほとんどのチェーン書店は自社店舗の販売実績をいつでも見られる状態になっており、回転率が低い人文書では、データが死に筋のチェックに使われることもよくある。

 それに対して「チェーン全体の数字をまとめるなど、地味でなかなか気が付かない動きを顕在化するなど工夫する必要がある」(営業部・飯島康氏)という。

1年以内に重版できない書籍は動かない

 POSデータは月次で収集し、日々のトレンドは紀伊國屋書店のPublineや日本出版販売のオープンネットワークWINなどを参考に重版対応などを行っているというが、店頭で既刊書の動きが悪くなり、新書への依存度が上がる中で、新刊の収益管理が重要な仕事になってきているという。

 「重版は販売データや在庫の状況から判断するが、初版部数をどの程度に設定するかが問題になっている」(持谷専務)。

 そのため、類似書籍の過去データなどを参照しながら初版部数を検討しているが、「販売データを分析すると、刊行1年目に重版できない書籍は2年目以降ほとんど動かないことが分かった。

 これまで専門書出版を支えてきた既刊書の売り上げが落ちて、新刊への依存度が上がるなかで、新刊1点ごとのコスト管理が重要になっている」という。

新たな販促手法の確立が課題

 持谷専務は原価管理システムを使って、新刊1点ごとに売り上げから直接原価を引いた粗利益率を毎月計算し、そこから部数と定価のシミュレーションを考えているという。そのため現在は「新刊の成績表を詳細に出して粗利をしっかり確保できる」ことにシステムが役立っているという。

 また、今でも書店ルートが最大の販売チャンネルだが、美術館や博物館なども重要な販路になりつつあり、そのために、もともとあった直販管理の機能をより簡便に使えるように修正を加えている。

 「原価をどう抑制するかも大切だが、やはり出版社としては部数を伸ばすための手立てを考えたい」という持谷専務にとって、今後の課題は、販売データなどを活用していかに書店のモチベーションを高めるかという、データを活用した新しい販売促進手法を確立することにあるという。