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事例紹介

Case

出版システム専門書出版

日本評論社
100周年記念事業「日評アーカイブズ」
PDFとPODで過去の資産を復活

新聞記事の内容《PDF》 A4資料《PDF》

Webソリューション
(電子版とプリント・オン・デマンド)
日本評論社様(文化通信bBB 2014/12/8 掲載)

株式会社 日本評論社

代表者 串崎浩
所在地 〒170-8474  東京都豊島区南大塚3-12-4
電 話 03-3987-8611(代表)
創 業 1952年5月
資本金 2000万円
従業員 53人

 日本評論社は100周年記念事業として11月5日、ウェブ上で過去の出版物への予約を募リ、電子版とプリント・オン・デマンド(POD)で提供する復刊の試み「日評アーカイブズ」を開始した。

2018年に100周年

 2018年で1918年(大7)の創業から100周年を迎える同社は、戦前から現在に至るまで、社会科学、人文科学などを中心に出版物を刊行。創業当初は文芸書を刊行するなど長い歴史のなかで幅広い分野を手がけてきた。また、一方で戦前・戦中には河合栄冶郎事件、横浜事件といった言論弾圧事件の試練に見舞われた。

予約20件で復刊を決定

 「日評アーカイブズ」は、こうした同社が蓄積してきた過去の資産を、100周年を機に改めて提供しようという企画。

 まず、復刊候補20点を専用ウェブに掲出して予約を募り、予約が20件に達したところで復刊を決定。現物からPDFデータを作成し、そのデータからPOD版を作成する。

 復刊を決めた段階で予約者には白動的にメールで販売を告知し、購入者にはPDF版とPOD版を販売する。

 また、ウェブでは同時に1918~1952年にかけて刊行した約2000点に上るリスト「日本評論社書籍目録」を、CSV形式でタウンロードできるようにしており、この中から復刊候補の希望なども募っている。

知的財産の再生目指す

 同社・串崎浩社長はこの事業を「知的財産の再生」と位置づける。候補作品20点は1920~1930年代に刊行した書籍が中心で、価格の問題もあってそのまま復刊することは難しい。そのため「こちらが思ったものを復刊するのではなく、過去の資産を公開して、ニーズに応えて名著を提供していく」のが狙いだ。

 また、POD化の精度が向上し、商品化に耐えうると判断したことも今回の取り組みのきっかけになった。復刊対象となる書籍は現物が劣化しており、そのまま画像にするだけでは判読が難しい。

 串崎社長は「実際に試してみると、古本よりも読みやすい。これならば商品として提供できる」と手応えを語る。

 予約を募る専用ウェブは光和コンピューターが構築した。予約者がそのまま購入するとは限らないため、予約は氏名とメールアドレスのみで気軽に登録でき、購入段階で宅配先の住所や決済用のクレジットカード情報を入力するという2段階の操作を、利用者がスムーズに行えるように工夫したという。

 「日本評論社書籍目録」については、復刊希望の他、掲載書籍の著作権者あるいは著作権承継者からの申し出、内容への問い合わせ、図書館関係者からの問い合わせなどを問い合わせフォームで受ける。

普遍性ある20点を選定

 最初の復刊候補に選定した20点は、いずれも著作者の死後50年以上が経過して著作権保護期間が終了した「パブリックドメイン 」であるのと同時に、同社の主要ジャンルのなかで昔遍性があると判断した著作を選んだ。

 現在も刊行する『法律時報』の創刊者の末弘厳太郎や河合栄治郎事件でも知られる河合栄治郎、天皇機関説の美濃部達吉、ビタミンB1の発見者で知られる鈴木梅太郎などの名著が並ぶ。

 販売はPDF版のみか、PDF版+POD版。価格は990ページの『統制法令集』(1938年刊)の場合、PDF版が本体4800円、POD版が同1万7800円。もし通常の復刊を行えぱ、価格は2万円以上になるだろうという。

 制作は20件の予約が集まった時点で復刊を決定し、1カ月以内にPDFデータを作成、それから1カ月以内にPOD版を提供する。PDF版はウェブからのタウンロード、POD版は宅配便で届ける。版面のPDFデータは画像だが、目次や見出しには当該ペーシへのリンクを貼る。

電子書籍での経験が生きる

 この取り組みについて串崎社長は「事業として損をするわけにはいかないが、できるだけリーズナブルな価格で過去の資産を提供したい。そのことで出版社としてのアイデンティティーを示していければ」と述べる。

 同社は早くから電子書籍にも着手しており、2012年から現在までに約60点を配信している。最初は既刊書が中心だったが、現在は刊行から3カ月程度で電了版を発売するケースもある。

 「初めは紙を脅かすかとも思っていたが、2年間継続するなかで、ものによっては紙との相乗効果があったり、市場で売れ行きが低下した書籍が電子版で販売することで、紙とは違った読者層に広がるといった経験をしてきた」と串崎社長。そうした経験も、今回の電子による復刊につながっている。

【復刊候補作品】

【人文科学〕橘撲『支那思想研究』(1938年)【社会科学】法律時報編集部編『逐条解説 国家総動員法』(1939年)、法律時報編集部編『逐条解説 国家総動員法(増補)附、物価停止関係等法令解説』(1939年)、穂積重遠『離縁状と縁切り寺』(1942年)、河合栄治郎『ファッシズム批判』(1934年)、河合栄治郎『欧州最近の動向』(1934年)、美濃部達吉編著『不戦条約中「人民の名に於て」の問題』(1929年)、美濃部達吉『法の本質』(1948年)、美濃部達吉『憲法と政党国法学資料五篇』(1934年)、美濃部達吉『公法と私法』(1935年)、下村宏『財政読本』(1926年)、上杉慎吉『憲法読本』(1928年)、末弘厳太郎監修、廣瀬武文編『統制法令集』(1938年)、末弘厳大郎『法窓雑話』(1930年)、末弘厳太郎『法窓雑記』(1936年)【自然科学】ダーウィン、大畑達雄訳『雌雄淘汰』(1926年)、鈴木梅太郎『全訂ビタミン』(1950年)、鈴木梅太郎『ビタミン』(1946年)鈴木梅太郎『ホルモン』(1941年)