株式会社評論社
自社システムと倉庫会社のシステム連携実現
光和コンピューターのシステムを導入
出版システム
株式会社評論社
(文化通信 2024/12/24 掲載)
『指輪物語』最新版の箱入りセット
アニメ映画「ロード・オブ・ザ・リ ング/ローハンの戦い」の公開に合わせて作成した書店向けPOP
株式会社評論社
所在地 | 〒162-0815 東京都新宿区筑土八幡町2-21 |
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電 話 | 代表・販売部 03-3260-9401 |
代表者 | 竹下晴信 |
児童書の翻訳書を中心に刊行する評論社は、倉庫会社に物流業務を委託したのに合わせて、在庫情報などの連携のために光和コンピューターのシステムを導入。自社開発のシステムにデータを取り込む運用を実現した。
同社は1948年に創業し、これまで海外の児童書やファンタジー小説などを刊行。新刊は月に2、3点、稼働点数は1000点ほどになる。
なかでも、『ずーっと ずっと だいすきだよ』(ハンス・ウィルヘルム作・絵/久山太市 訳)、『わすれられない おくりもの』(スーザン・バーレイ作・絵/小川仁央 訳)、『おやすみなさい おつきさま』(マーガレット・ワイズ・ブラウン作/クレメント・G・ハード絵/瀬田貞二 訳)、「チョコレート工場の秘密」などで知られるロアルド・ダール作品シリーズ「ロアルド・ダール コレクション」(20巻・別巻3)などロングセラーが多い。
そして、1972年に刊行を開始した『指輪物語』(J・R・R・トールキン著、瀬田貞二・田中明子 共訳)は今も同社の主要出版物として知られる不朽の名作だ。
2001年から2003年にかけて公開された初の本格映画化作品3部作のヒットでは、それまで30年近くの売上を1年で上回るといった現象も経験。2020年には電子版も発売し、2022年には翻訳者の田中明子氏が長年の研究成果にもとづき訳文・固有名詞を見直す新訳文庫『最新版 指輪物語』全7巻を刊行した。
さらに、今年12月27日にはアニメ「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」や「精霊の守り人」で知られる神山健治監督、実写映画版の監督ピーター・ジャクソン製作総指揮によるアニメ映画「ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い」が公開されるため、同社ではPOPなどを作成して販促に取り組んでいる。
50年以上前に日本でほとんど知られておらず、その長大さで他社が翻訳を断念したといわれる同作を日本に紹介しこれほど長きにわたって読み継がれるロングセラーに成長したことについて、同社・竹下克樹専務取締役は「どのような出会いが、どのような未来につながるのかはわかりません」と述べる。
物流の外部委託でシステム導入
竹下氏が同社に入った20年ほど前まで、同社の経理は「算盤が主流でした」(竹下氏)。電算伝票もあったが、単に印字するために利用されていただけで、在庫管理も帳簿だったという。
竹下氏はシステムの導入を検討したが、当時のベンダーからの提案はいずれも竹下氏の想定よりかなり高額だった。そこで、前職で子会社設立時にシステムの要件定義に参加した経験があった竹下氏は、同業他社の役員に話を聞いたり、半年ほど独学でシステムを勉強。独自開発でシステムを構築した。
その後、2023年に自社倉庫で行っていた在庫管理や出荷業務を関通ネクストロジ株式会社(当時は河出興産株式会社)に委託したのに伴い、倉庫との連携のため光和コンピューターのシステムを導入した。
「他社システムと連携してデータを日々間違いなく取り込むには、やはり専門家に任せた方が良いと考えました」(竹下氏)。また、ある程度の費用を覚悟していたが、見積額は思ったほどではなかった。「提案は『ここから始めましょう』という最低限の内容でした。これで長くお付き合いできそうだと感じました」という。
導入によって、倉庫会社から日々届くデータを光和コンピューターのシステムに取り込んで請求書発行業務などを行い、CSV形式にして自社システムに取り込む体制が整った。
電子書籍の管理も研究
同社は翻訳書が多いため、まだ電子書籍化は限られている。既刊の電子化は権利取得のために新たにアドバンス(前払い印税)を要求されることも多いので、当初から紙と電子で契約する新刊を中心にサイマル(同時)刊行するようにしている。この結果、現在40点ほどになった。
40点とはいえ、電子版の入金管理や印税計算は煩雑で、「これが増えていくと大変だと思っています。何が課題なのか抽出して将来に備えます」と今後のシステム対応も視野に研究を進めている。