株式会社大月書店
時代に応え、歴史の力を積み重ねる
出版システム
株式会社大月書店
(文化通信B.B.B. 2022/9/6 掲載)
井上氏(右)と山田氏
近年の売れ筋と9月15日刊行『改訂新版 統一教会とは何か』
株式会社大月書店
創立 | 1946年11月 |
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資本金 | 1600万円 |
代表者 | 中川進 |
従業員 | 9人 |
所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷2-27-16 2F |
電話 | 03-3813-4651 |
大月書店はこのほど光和コンピューターの出版ERPシステムを導入し、作業の時間短縮や効率化を実現した。『マルクス・エンゲルス全集』『レーニン全集』などで知られる同社は、1946年の創業以来、社会科学系の専門書を中心に出版活動を続けてきたが、リモート勤務やオンライン受発注など変化への対応も続けている。
時代の要請に応える出版活動
同社の刊行点数は、書籍が64期(2020年度)に32点、第65期( 2021年度)に34点と30数点で推移。また、自治労連・地方自治問題研究機構編『季刊自治と分権』、メディア総合研究所編『放送レポート』(隔月刊)、クレスコ編集委員会・全日本教職員組合(全教)編『明刊クレスコ』といった定期刊行物を発行している。
ここ数年では、半藤一利さんの絵本『焼けあとのちかい』(2019年7月12日刊)が3刷1万6000部、ファシズムの体験学習を紹介する田野大輔著『ファシズムの教室』(2020年4月16日刊)が6刷1万1000部、男子2人を育てる弁護士・太田啓子氏によるジェンダー平等時代の子育て論『これからの男の子たちへ』(2020年8月21日刊)が11刷2万7000部など注目を集めた。
また、今年に入ってからも、一橋大学で日韓関係の歴史を学ぶ学生がまとめた加藤圭木監・一橋大学社会学部加藤圭木ゼミナール編『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』(2021年7月15日刊)が5刷1万部、韓国で16万部のベストセラー翻訳書のキム・ジへ著『差別はたいてい悪意のない人がする』(2021年8月23日刊)が7刷1万8000部に達するなど時代の要請に応える出版活動を続けている。9月15日には教育史料出版会が1992年に刊行した書籍を改訂した有田芳生著『改訂新版 統一教会とは何か』を発売する。
20年ほど前からは、学校図書館、児童館、公共図書館などへの共同販促グループ「クリーンブックス・グループ」に加盟し、児童・ヤングアダルト分野も強化してきた。
代表取締役社長・中川進氏はこうした出版物について「当社の歴史の力で培ってきたものが生きています。著者に当社を選んでもらえるのはその歴史ゆえだと思います」と述べる。
オフコン撤退で新システムに移行
システムは1980年代からオフコンを利用してきたが、メーカーがオフコンから撤退するなどしたことから、対応を考えざるを得なくなった。同じシステムを導入していた春秋社や誠信書房が光和コンピューターのシステムに移行したことから、2019年秋に同社も光和コンピューターのシステムを導入することを決め、2021年9月に本格稼働した。
導入したのは、販売管理システム(取次・直販)、印税支払システム、原価管理システム。定期購読はそれほど複雑ではないこともあり、表計算ソフトでマクロを組んで管理することにした。
導入にあたって、「以前のデータを自分で抽出したりしたので作業が大変でしたが、光和コンピューターは出版システムに特化しているので『常備寄託』など説明しなくてもいいので助かりました」と取締役管理部部長・井上千絵氏は話す。
時短・リモートなど実現
システムは管理2人と営業2人の計4人が利用している。書店からの受注は電話、FAX、出版VANなどで受けているが、これらは物流委託している大村紙業の受注センターでデータ化され、日々提供されるExcelデータを取り込んでいる。また、今年からはオンライン受注サイト「ブックインタラクテイブ」の試用も開始した。
販売管理システムの導入によって「全体的に作業の時短を実現できました」と管理部・山田朝子氏。このほか、以前のシステムでは日々の更新が必要だったため、その後に修正があると赤伝を切らなければならなかったが、現在のシステムは月次更新になったことで、伝票や請求書の修正がある程度できるようになった。
新システムは作業をパソコン上で操作できるようになったため、コロナ下でPCの遠隔操作ツールを導入したことで、在宅でも日々の業務が可能になるというメリットもあった。
今後の課題は印税システムの修正を続けていることと、「様々な帳票がCSVに落とせるので、今後活用の方法を営業・編集も含めて検討したいと考えています」と井上氏は述べる。