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事例紹介

Case

書店システム

ページワン・シンガポール店
ケイニー・タン氏が設計
コンセプチュアルな棚作り
ページワン・シンガポール店

新聞記事の内容《PDF》 A4資料《PDF》

書店トータルシステム 「Super Book Shop」
ページワン 様 (文化通信bBB 2007/5/28掲載)

ページワン・シンガポール店

島をイメージした店内は3段構造。中心の中国書から周囲の英語書へと波紋のようにジャンルが広がる
棚はユニットを組み合わせることで様々な形を演出できる

アート・デザインコーナーの棚はわざと斜めに作られている

ページワンの棚で特に目を引くのは書見台のようなこのスタイル。
実際に来店客がこの上で本を読んでいる。また各種のフェアも行われる。

什器は全てケイニー・タン氏のオリジナル作品で、グループの他店でも使用している。

 台北や香港でユニークな書店を展開しているページワンは、昨年11月17日にシンガポールのショッピングセンターVIVOに800坪の基幹店を出店した。「蓬菜島」をモチーフにした内装は、日本でも近年、紀伊國屋書店の店舗デザインを手掛けるようになって注目されている建築家ケイニー・タン氏が設計した。

目を引くオリジナル什器

 島をイメージした店舗は、まん中に行くほど高くなる3段構造。商品は中心に中文書(中国語)をおき、その周囲に同ジャンルの英語書を配する。「欧米からの一方通行の文化に対して、アジアから発信していく」という基本コンセプトを波紋のイメージで表現したという。

 何よりも目を引くのは、斜めになったり、視界を遮ったり、書見台のようにみえるユニークな什器だ。全てケイニー氏のオリジナルだが、04年にデザインしたものを組み合わせながら使っているため、デザイン料、電気設備など含めた工事費は坪22~23万円程度と、見た目ほど高くはない。

COOは元紀伊國屋の山口氏

 ページワンで書店部門を統括しているのは、山口善之COOという日本人だ。彼は紀伊國屋書店出身で、かつては梅田店にいたこともある。その後、シンガポール、タイと東南アジアの現地法人に在籍、バンコックの洋書専門の2号店は山口氏がページワンに移る前にケイニー氏にデザインの裁量権を全面的に委託した初めての店舗だった。

 ページワンの社長マーク・タン氏はケイニー氏の弟。シンガポールで小規模だが高名なデザイン専門店を経営し、香港、台北へと拡大した。

ケイニー氏とコンセプトから作る

 ケイニー氏との店舗作りについて山口氏は次のように述べる。「まずコンセプトを決めて、ケーニーと相談しながらモチーフを選ぶ。あとは完全に任せるが、いろいろと口は出す」。建築家であるケイニー氏と、書店人の山口氏は、それぞれ独自のイメージをもっている。これをぶつけ合いながら創り出してきた店舗は、他にはない雰囲気をもつ。

 ちなみに日本から書店人が見学に訪れる台北のT101ビル店は、室町時代の雪舟の山水画をモチーフにしたという。

ほとんどの商品が輸入品

 シンガポールは元英国領で現在は国民の8割近くが華系(中国人)だ。そのため、本は英文と中文がほとんどで、国内の出版社は極めて少ない。VIVO店では英文書は国内の現地代理店を除けば米国、英国、中文書は繁体字が台湾、簡体字が中華人民共和国と、ほとんどが輸入品だ。

 しかも、山口氏の考えは、紀伊國屋書店(シンガポールで最大規模の1200坪)、ボーダーズ(米国第2位の書店チェーン)といった主要店との差別化を図るため、ベストセラーよりアートや専門書に力を入れ、1冊からの細かい補充を行っている。

 これは海外では珍しいスタイルで、日本流のノウハウを海外でユニークな店作りにつなげているといえる。

徹底した個品管理が必要

 洋書だけでも出版社やホールセラーなど200社近くの取引先があり、しかも、同一タイトルでも仕入時点の為替レートによって原価が変わる。その原価と販売価格を管理し、返品可能な商品については仕入れたときの伝票番号を付けなければならない。そのため、商品には独自のバーコードを貼って個品管理する。

 出版社の販促物を置かないというコンセプトも、「通路をふさぐこともあるが、今までなかった棚が一時的に存在すると在庫の管理上問題になる。プロモーションをするなら自店の棚を使う」という理由からだ。

 このほど日本の光和コンピューターからPOSシステムを導入したが、それも「1冊からでも補充するという日本の顧客に向いた販売思想が優れているため」だという。今後、このシステムを台北、香港にも導入していくという。

大型店と中型店を東南アジアへ

 ページワンの年商は焼く50億円で、85%が書店部門の売り上げだ。決して大きな資本力を持っているわけではない。そのため、台北T101ビル店、VIVO店など販売データを収集するため大型基幹店と、300坪程度の繁盛店を組み合わせて東南アジアの主要都市に展開する戦略をとっている。高度なアート・デザイン書のノウハウを活かして、地元書店とのコラボレーションも模索する。

 コストが高く市場がシビアな日本への進出はまだ日程に上がっていないというが、「良いパートナーがあれば」と、決して後ろ向きではない。