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事例紹介

Case

出版システム

株式会社晶文社
システム改修で受注・出荷指示など効率化
電子書籍拡大で「PUBNAVI」も導入

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出版システム
株式会社診断と治療社
(文化通信 2024/11/26 掲載)

川崎副社長

左から『首都圏 高校受験案内』『吉本隆明全集』『利他・ケア・傷の倫理学』『ギリシャ語の時間』

株式会社晶文社

創 立 1960年2月3日
資本金 1000万円
代表者 太田泰弘
所在地 〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-11
電 話 03-3518-4940(代表)

人文書などを刊行する株式会社晶文社は、長年にわたって株式会社光和コンピューターの出版ERPシステムを利用しているが、近年の改修で受注情報の入力から倉庫会社での出庫まで連動させて作業を効率化することができた。また、電子書籍の拡大に伴ってこのほど「PUBNAVI」も導入し利用に向けた準備を進めている。

人文書・学校案内など3000 点刊行

同社は1960年2月3日に創業。来年で創業65年を迎える。創業以来、人文、思想、芸術、文学を中心にした一般書籍と年度版で学校案内、ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格検定対策書を発行。「『語の根源的な意味でのラジカルな出版物を出したい』という創業時からの理念を大切にし、活動を続けてきました」と取締役副社長の川崎俊氏は同社の姿勢を説明する。
創業時最初の出版物は『東京都 私立公立 高校受験案内』で、翌年に寺田透『理智と情念』、大岡信『抒情の批判』、島尾敏雄『作品集』1・2巻を刊行した。
現在、年間の新刊点数は人文係が50~55点、学校案内は『首都圏 高校受験案内』、『首都圏 私立高校 推薦・優遇入試ガイド』、『首都圏 中学受験案内』、『大学受験案内』、資格検定は『ケアマネジャー基本問題集』(上・下)、『ケアマネジャー合格テキスト』、『ケアマネジャー実戦予想問題』をそれぞれ年度版で刊行している。これまでの累積刊行点数は3000点を超える。
犀のマークとかつて平野甲賀氏のブックデザインなどが特徴だった同社の人文書は、エンツェンスベルガー著/ベルナー絵『数の悪魔』(丘沢静也訳)、「植草甚一スクラップ・ブック」、ヒッチコック・トリュフォー『映画術』(山田宏一・蓮實重彥訳)といったロングセラーの名著も多く、2014年から刊行を開始した『吉本隆明全集』(全38巻)は来年完結する。最近は思想・哲学書の近内悠太著『利他・ケア・傷の倫理学』などの売れ行きが好調だ。

ノーベル文学賞受賞作家の作品が好調

ノーベル文学賞を受賞したハン・ガン氏の『ギリシャ語の時間』(斎藤真理子訳)は受賞後に注文が殺到。一時在庫切れになったが7刷1万2100部になっている。
同書は〈韓国文学のオクリモノ〉シリーズ6点の1つとして2017年に刊行。受賞前までに5刷5100部発行していたが、受賞発表の10月10日にamazonですぐに在庫切れでカート落ち。6刷5000部を投入してカートが復活した10月25日から11月3日の10日間で772冊に達した。リアル書店でも多い日だと1日にPOSで100冊を超えるなど好調が続いている。電子版は刊行していなかったが受賞を機に電子化もした。
実は〈韓国文学のオクリモノ〉で『ギリシャ語の時間』以外の作品はすでに版権契約を解除していた。ハン・ガン氏が英国の世界的な文学賞「ブッカー国際賞」を受賞していたことや、cuonが刊行した同氏の『菜食主義者』(川口恵子編集、きむ・ふな翻訳)の売れ行きが良かったことで維持していたことが奏功した。

システム改修で作業効率化

販売管理には2007年から光和コンピューターのシステムを使用してきた。ただ、以前はシステムを改修せず、利用を在庫管理などの基本業務に限定していたため、書店から電話やFAXで受けた注文内容を短冊に記入して倉庫へと送るというアナログな作業が発生していた。
その状況について、光和コンピューターの担当者から改善の提案があり、数年前にシステムを改修。書店からの注文をダイレクトに販売管理システムに入力し、倉庫業者(株式会社ナガオ)の端末から発送指示や伝票も自動発行できるようにした。その結果、「ミスが減少し、作業時間も短縮されるなど大幅な効率化が図られました」と川崎副社長。
書籍の電子化は、2019年初旬あたりから新刊で紙版と電子版を同時発売するサイマル出版を行っており、電子書籍の総点数は389点になっている。売れ行きも新刊売り上げの10%程度に拡大。電子書籍のアイテムが増え、売れ行きが良くなるほど売上集計や印税計算の作業量が増えていくため、光和コンピューターのクラウド型電子書籍管理システム「PUBNAVI」を導入。現在、利用に向けてデータ整備などの準備を進めている。
2006年に同社に入社した川崎副社長は「出版業界を取り巻く環境は厳しいですが、来年の65周年を契機に、より精力的に出版活動を展開していく決意を新たにしています」と述べている。