東邦レオ株式会社
批評家・宇野常寛氏がプロデュース 宇野書店をオープン街の価値向上目指す
書店システム
東邦レオ株式会社
(文化通信 2025/8/12 掲載)
ビルの外観
説明する宇野氏
人工芝が敷かれた床と座ることができるスペース
光和コンピューターのセルフレジ
東邦レオ株式会社
所在地 | 東京都豊島区北大塚1-15-5 東邦レオ東京支社ビル2階 |
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営業時間 | 平日10:00~21:00、土日・祝日12:00~20:00 |
東邦レオ株式会社は8月1日、東京・豊島区の自社ビルに批評家・宇野常寛氏がプロデュースする「宇野書店」をオープンした。グリーンインフラを軸とした居心地の良い街づくり事業の一環として、同社初となる、書店によるオフィスビルの〝公共空間化〟を通じた価値向上に挑む。
オフィスビルの価値問い直す
宇野書店が入るのは、JR山手線・大塚駅から徒歩約5分という好立地にある自社ビルの2階部分(150平方メートル/約45坪)。もともとビル全体を自社で使用していたが、コロナ禍でリモートワークが浸透したためフロアの稼働率が低下。通常であればテナントへ貸し出す発想となるが、同社はこれを新たなオフィスビルの価値創造に向けたアイデア実践の好機と捉えた。
出発点はあくまでも「オフィスビルの価値と街全体の魅力の向上」のためであり、本の販売利益よりも「書店としての公共的価値」を引き出したい狙いだ。
書店の公共的価値
オープンに先立って行われた内覧会で、プロデュースを担った批評家の宇野常寛氏は「書店は本を買って帰ることに独特の充実感がある。自分の〝関わりしろ〟が大きく、書店があることで(そこが)自分の街だと思える公共的価値がある」とリアル書店の公共的価値を示したうえで、「これからのオフィスの価値は、従業員のクリエーティビティを刺激するとか、もっと言ってしまえば幸福にすることなのではないか。メンバーシップを確認するために出社するのではなく、本当に仕事をするのに良い環境だから来る。これだけがオフィスの『解』だと思っている」と書店とオフィスにおける社会的役割の相乗効果を説いた。
ニュータイプの書店めざす
緑を基調にまるで公園のようにしつらえられた店内は、もともと敷かれていた人工芝をそのまま生かしたという開放的なリラックス空間。来店者は入り口で靴を脱いでシューズラックに納め、足裏に心地良い刺激を感じながら本との偶然の出会いを楽しむことができる。ナチュラルな丸太による本棚やテーブル、ベンチなどといった什器類も、もともと同社が使っていたものをリユースして作られたもので、今後行われるさまざまなイベントに応じて配置を変化させていくのだという。
扱う書籍は、人文・社会・サブカルチャーを中心に都市開発系を加えた約6000冊。本は青山ブックセンターから仕入れた。すべて宇野氏による選書で、候補本は1万冊にも及んだという。批評家として著名な宇野氏の著書をはじめ、オンラインでは得られない「いつ来ても、知らなかった『面白そうな本に出会える』」書店を目指した。
また、運営のオペレーションはビルの機能と連携して無人営業を基本とすることでランニングコストを抑え、書店導入の障害を軽くする狙いだが、今後はいくつかのパターンが必要になってくるだろうとしている。
書籍による利益ではなく、書店が放つ公共的価値をオフィスビルに創出させることでビルの不動産価値と街の魅力を高めようとする新たなエリアマネジメントとしての「宇野書店」。アフターコロナ時代に現れた「ニュータイプ」の挑戦に注目したい。