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事例紹介

Case

出版システム

全国大学生活協同組合連合会
近刊情報の登録出版社、年内に200社を見込む
仕入れて売る体制の確立が狙い

新聞記事の内容《PDF》 A4資料《PDF》

出版ERPシステム
全国大学生活協同組合連合会 様(文化通信bBB 2010/11/22 掲載)

全国大学生活協同組合連合会

所在地 〒166-8532 東京都杉並区和田3-30-22 大学生協杉並会館
電 話 03-3307-1133
専務理事 和田寿昭
会員組合員 1,500,431人

 全国大学生活協同組合連合会は11月1日、近刊情報を収集する専用のウェブサイト「専門書近刊サイト」を開設した。出版社がウェブサイトで近刊情報を登録し、各店舗が事前発注を行う仕組みで、出版社200社の参加を見込んでいる。

店舗の仕入れ力を強化

 「今までは黙っていても本が来ましたが、これからは陳列したい書籍を店が発注しなければなりません。そのための店舗の力を付けたいと思っています」と全国共同仕入事務局・渡辺潔課長は今回のシステム導入の狙いを話す。

 大学生協は全国10ブロックで店舗は300余に達するが、東京大学や早稲田大学のように独立した書籍部が大型の書籍売場を持って、書籍専門の担当者を配置している店舗は少なく、小規模だったり、他の商材との兼任の担当者の店舗が多い。

 「これまで取次や出版社のパターン配本中心でしたが、発行総量の減少に伴って、最近は、その大学の教員が書いた本など必要な専門書でも配本ゼロの店舗が多いのです。新システムで仕入れて売る体制を確立したいと考えています」と同・山崎実次長はいう。

パターンでは必要なものが届かない

 取次からのパターン配本の量は10年前の半数程度に減り、1アイテムの部数は200~300程度になっているため、「各店1冊、多くても2冊という感じです」(山崎次長)という。

 また、出版社や取次が配本を決めるにしても、「教科書が多く売れる店が必ずしも新刊をよく売る店ではありませんし、理系の大学などは新刊でも教科書の比率が高く、教科書に使う学校でなければ売れない」といった個々の特徴にきめ細かく対応するのは難しい。

 しかも、この間、大学院生が倍以上に増加し、講座も変化するなど大学の環境は大きく変わっているにもかかわらず、「今までのパターンでは必要なものが必要なところに行っていないのが実情です」(山崎次長)という背景もある。

POPなどの情報も登録

 「専門書近刊サイト」は、各店舗が通常の発注やPOS分析などを行っている光和コンピューターのシステム「B-POS」の機能として新たに組み込んだ。

 サイトは出版社が近刊情報を登録するサイトと、店舗が発注するサイトに分かれており、出版社はIDとパスワードを使って近刊情報を入力する。登録する情報は書名、著者名、刊行年月日、定価、判型、ページ数、ISBNといった基本情報26項目のほか、書影、販売条件、内容情報、さらにチラシ、注文書、POPなどもPDFでアップロードできる。

 これまで出版社がFAXで送っていた情報をサイトで提供できるようにすることで、店舗に送られる大量のFAXを減らすことも狙っているという。「多くの店舗は本だけ扱っているわけではないので、日々膨大なFAXが来ますがほとんど捨てられています」(渡辺課長)というためだ。

将来は近刊情報センターから取得も

 近刊情報は最短2週間前までに登録し、新刊見本の時期に合わせて出版社が注文の締切を設定する。出版社は随時、注文状況を確認することができ、他社商品の受注状況を見ることも可能だ。

 近刊情報の登録は。単品毎にウェブで入力することもできるが、CSVファイルで一括してアップロードすることもできる。この場合のフォーマットは「Kタイプ」「Mタイプ」という2種類を用意しており、先行する紀伊國屋書店、丸善のスタイルに合わせることで出版社に負担をかけないようにしている。

 また、日本出版インフラセンターが設立を予定している近刊情報センターの情報に準拠しており、センターが稼動すればそのまま取り込むことができ、そうなれば出版社がセンターに情報登録すれば、大学生協にも自動的に情報が届くようになる。

店舗の発注支援に向け情報提供も

 各店舗は発注用サイトにアクセスして一覧からカート方式で冊数を指定して注文する。そのときに、小規模店舗などでは自店に必要かどうか判断できないこともあるため、全国店舗での発注状況を確認することもできる。また、事前にジャンルや規模で比較したい店舗を登録しておくことも可能だ。さらに、店舗が発注するための目安として、事務局サイドで主要店舗の担当者の協力により「お勧め度」を設定する。

 そして、店舗が発注するなど一度処理した近刊情報は、次回以降は表示させず、作業の効率を高めるような仕組みにしている。店舗が自店に合わないジャンルなどを事前に登録することで最初から非表示にする機能も搭載している。これは「日々忙しい店舗が近刊を確認して発注する時間は1日に15~30分とみています。そのためできるだけ素早く処理ができるようにしています」(渡辺課長)というためだ。

 注文データは締切後、自動的に出版社に送信され、出版社が取次への新刊見本の段階で配本を指定する。参加出版社に対しては、事前発注には満数配本するよう依頼している。

170社が参加の意向

 稼動に向けては、出版団体などグループ単位での説明会を開催するなど、出版社200社余に説明してきたが、開始時点で約170社が参加、もしくは参加の意思表示をしているという。そのため、年内200社という目標はほぼ達成できそうだという。

 一方店舗側は、新システムを導入する前に、事務局サイドが手動で情報登録を行う「注文集約」システムを1年半ほど運用しており、その段階でも150店舗が利用していた。

 しかし山崎次長は「これから年始にかけてしっかり運用して信頼を獲得していかなければならないと思っています」と気を引き締めている。