日本ヴォーグ社
在庫管理のリアルタイム化と精度向上を実現
本社と物流子会社にシステム導入
出版ERPシステム
株式会社 日本ヴォーグ社 様 (文化通信bBB 2010/4/26 掲載)
株式会社 日本ヴォーグ社
創 立 | 昭和29年5月8日 |
---|---|
資本金 | 4,000万円 |
所在地 | 〒162-8705 東京都新宿区市谷本村町3番23号 |
営業種目 | 出版事業、会員制事業、教育事業、通信販売事業、 インターネット事業、イベント事業 |
従業員数 | 200人(平成21年2月1日現在) |
代 表 | 代表取締役社長 瀬戸信昭 |
URL | http://www.tezukuritown.com/ |
日本ヴォーグ社は08年11月に光和コンピューターの新システムを導入し、あわせて翌年には物流を担っている子会社のNVロジテックにも同社システムを入れることで、在庫のリアルタイム管理や、伝票レスによる作業効率の向上に結び付けている。
実績とノウハウで選定
同社は手芸・編み物などを中心としたジャンルで、雑誌『キルトジャパン』と、書籍・ムックの新刊を年間約130点刊行している。稼動点数は約900点で、物流は新座市のNVロジテックが担当する。
15年ほど前から光和コンピューターのシステムを利用してきたが、導入から時間が経ち、システムもハードも老朽化が進んだため、07年6月から新システム導入の準備を始めた。
複数社から見積もりを取った結果、それまでと同様に光和コンピューターに依頼することを決めた。情報システム室・池田一貴室長は「価格の問題よりも、実績とノウハウを持っていて、システムの選択肢が多かったから」と選定の理由を話す。多くの出版社システムを手掛けてきた光和コンピューターが提供するパッケージは、バリエーションが多い点を特に評価したという。
在庫のリアル化と伝票レス目指す
導入したのは、「販売管理」「出版VAN」「定期配送管理」「広告管理」「印税支払管理」「書店実売管理」「原価管理」の各システムそしてNVロジテックでも「倉庫管理」システムを導入した。
池田室長は、システム導入の目的として、まず「在庫のリアル化と伝票レス」をあげる。
それ以前の在庫管理は、1日1回のバッチ処理だったが、取次からの注文などで大量の出荷があると、実在庫とのズレが生じてしまい「ギリギリのものは現場に電話して数えてもらったりしていました。やはり受注入力の時点で在庫を確認できないと支障が出ます」と中山直子受注センター長は話す。
また、受注した商品のピッキングは、これまで受注ごとに伝票を出力していたが、受注情報を集約してコード順にピッキングリストを出力する「トータルピッキング」を実現。このために、在庫倉庫のレイアウトを変更するなど、システム導入に合わせて物流現場で運用面の見直しも行った。
「NVロジテックとは綿密な打ち合わせをして、すり合わせるのに結構苦労しました」(池田室長)というが、こうした打ち合わせに時間をかけたおかげで、効率的な運用が可能になっているようだ。
ロジテック、HT導入で作業の精度向上
NVロジテックは35期を迎えるが、出版物に限らない同社の多様な事業を支えている。
日本ヴォーグ社は、書籍・雑誌の発行以外に、手芸キットなどの通信販売事業と、押し花教室を中心とした会員制事業を手掛けている。
通信販売はカタログとインターネットで手芸商品や出版物を受注。また、会員制事業は押し花を中心とする6つのクラフトジャンルで全国に約4万人の会員があり、技術を取得した会員(講師)が教室を開催している。こうした顧客に対しては、その教室で使用する材料を個人宛に発送している。
また、出版物の販売先も、取次・書店ルート以外に、手芸店など特約店への直販ルートもある。現在、直販ルートの比率は30~35%程度だというが、こうした取引先には宅配便などで納品する必要がある。
NVロジテックは、こうした多様な物流業務を60~70人で処理している。
昨年、光和コンピューターのシステム導入で「ハンディターミナル(HT)」の利用を開始。在庫のレイアウトをコード順に変更したことで、ピッキングリストのコードを読み取って作業ができるようになり、効率化と入出庫のミスの減少を実現。棚卸の精度も向上したという。「現場の人間が在庫を意識するようになり、精度の向上に結びついた」と池田室長はみている。
受注時点で引き当て可能数を減
書店からの受注はNVロジテック内に置いている受注センターが受け、直販の特約店からの注文は原則として本社営業で受ける。本社で受けた注文も日々の回送便で受注センターに送り、一括して入力する。
注文情報を入力した時点で、引当可能な在庫数を減らすことによって、リアルタイムに情報を反映している。
また、同社では在庫の7割程度は1000冊以下のロットで、「在庫原価が3回転している」(城戸崎達実執行役員)というが、在庫冊数が1ヶ月の必要冊数と取り置き冊数を下回るとアラートが出る仕組みにしている。
また、これまで受注センターで行っていた入出庫、返品、断裁の入力を、NVロジテックがHTを利用して行うようになったため、受注センターでの作業はデータのチェックのみとなり、新システム導入以前は9人だった体制が5人に省力化できた。
製作業務も省力化
製作面でのシステム利用も進んでいるという。資材などの発注はこれまで印刷会社、製本会社、用紙会社、加工会社向けにExcelで発注書を作成しており、それぞれの支払いにタイムラグがあるため、2~3カ月をまたいで120件余に上る請求を一つずつ消し込む作業が発生していた。
この発注作業をシステム化したことで、業者と商品と数量を選べば取引先ごとに発注書を作成することができ、消し込み作業も業者ごとにできるようになった。これまで作業は社員1人と派遣社員が週5日間かけて行ってきたが、派遣社員の勤務日を週2回に減らすことができた。そして「発注と請求の消し込みだけなら1人でできます」(出版制作室・崎村健一氏)という。
印税計算も、実数を調べてExcelで計算していた作業を自動化することができた。
さらに良いシステムを目指す
システム導入について、城戸崎執行役員は「厳しい状況の中で大切な資産をいかに回すかは重要なテーマです。生産物を絞って適正在庫を効率的に回すために、システムをますます良くしていきたいと考えています」と述べる。