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事例紹介

Case

デジタル・オンデマンド

山梨日日新聞社
電子とPODで書籍出版の可能性広げる
DOD出版センターのソリューション活用

新聞記事の内容《PDF》 A4資料《PDF》

Webソリューション
(電子版とプリント・オン・デマンド)
山梨日日新聞社様(文化通信bBB 2014/12/22 掲載)

山梨日日新聞社

代表者 野口英一
所在地 〒400-8515
山梨県甲府市北口2-6-10
電話 055-231-3105
創業 1872年に『峡中新聞』として創刊
従業員 190人

 山梨日日新聞社は今年5月、㈱光和コンピューターと、㈱SCREENグラフィックアンドプレシジョンソリューションズ(GP)、㈱メディアテクノロジージャパン、京葉流通倉庫㈱の協業事業「デジタル・オンデマンド出版センター(DOD出版センター)のサービスを利用して、電子書籍とプリントオンデマンド(POD)を組み合わせた新しい出版の試みに着手した。

 同社は山梨県を中心に約20万部を発行する地方新聞社。出版活動を行っているコンテンツ事業局出版部は大森真樹部長を含めて3人体制。月刊グラフ誌『ザやまなし』を約5万部発行するほか、企画出版と自費出版で年間14点(2013年実績)を刊行している。

新聞連載を電子と紙で

 PDOで作成したのは新聞紙面で連載した「フォーカスやまなし」をまとめた書籍の上巻。この連載は1年を通して20回にわたって山梨を代表する事象や人物などを記事と写真で紹介した。

 連載を「形にして残したいと考えていた」という大森部長は、昨年12月に開始した電子書籍の第2弾として同書を発行したが、その過程で制作を依頼していた関係会社のサンニチ印刷からDOD出版センターの「デジタル・オンデマンドブック」の情報が入った。

 電子書籍は紙の書籍に比べて製作費が安く在庫負担がないなどのメリットがある一方で、現在は読者に刊行を知らせる手段が限られ、思うように売れ行きが伸びないという課題もある。そこで大森部長は「電子と紙を両輪にして成り立たせることはできないか」とPDOの刊行を決めた。

用紙・印刷方式を最適化

 電子書籍化はサンニチ印刷が担当し、新聞に掲載した記事や写真、図版などをページ組みしてフィックス型とリフロー型のEPUBを作成し、サンニチ印刷の電子書籍ストアを含め様々な電子書籍ストアで販売している。

 POD版はこのPDFデータを元に、DOD出版センターで、嵩高のクリーム書籍用紙を使って束を出しながら重量を抑えるなどして作成した。電子化を先行したため、POD版は校正などの作業を省いてスムーズに作成できたという。

 DOD出版センターではSCREENGPが開発したロール紙を利用するインクジェットデジタル印刷機「TruepressJet520」を使ってPOD版を150冊作成した。185ページで製作費は1冊642.5円。「この価格でこの品質は良いというのが第一印象。文字は読みゃすく、写真もしっかり出ている。当社の幹部も『この品質なら』と驚いていました」と大森部長は評価する。

 サンニチ印刷生産一部土屋友典課長も「DOD出版センターは印刷方式と用紙とが最適な結果を生むように設定されており、品質が保証されていたので安心してお任せできました」と述べる。

自費出版への活用を期待

 POD版はあえてISBNコードなどを付けず非流通本にした。大森部長はこの企画を将来的に写真が映えるカラーのオフセット印刷で作成し、流通させようと考えていたからだ。

 ただ、本来数十冊程度の小ロットで力を発揮するPOD版を今回150冊作成したのは、毎年東京で開かれる「山梨政経懇話会」の参加者に頒価1800円で販売することと、今後自費出版のサンプルとして在庫を持とうとの考えからだ。

 「当社規模の地方新聞社では、企画出版物をなかなか作れない時代。経営を安定きせるには自費出版が重要になっています」という事情がある。

 オフセット印刷で作成すると100冊程度のロットで製作単価が100万円単位になる。大森部長は「自費出版の場合、30冊ぐらいの少部数が求められることが多いのですが、100冊で100万円といった提案をして交渉が終わってしまうケ一スもあります。しかし、今回のソリューションなら提示金額は2桁で収まり、受注に結びつけやすくなります」と期待を示す。

他の新聞社も興味示す

 同社をはじめとした地方新聞社の出版部門と共同通信社の46社で構成する「全国新聞社出版協議会」の会合で、大森部長がこの事例を報告したところ、,「サンプルが欲しいなど、関心を示す社も多かった」という。

 また、同社は今年9月、自費出版のニーズを掘り起こそうと自分史づくりきっかけノート』(本体200円)を発行。新聞紙面などで告知すると「思った以上に出ました。問い合わせも増えています」と編集を担当する風間圭氏は話す。

 そして、大森部長は「こうした商品とPODをセットにして提案していくのも一つの手段になると思います」と新しい可能性を追求していく考えだ。

PRの手段にも

 また、今回のPOD版は7月に東京で開かれた東京国際ブックフェアに出展したDOD出版センターのブースで展示・販売もされた。

 風間氏はこの試みにも期待したという。「地方新聞社の本は書店では地方出版コーナー』などに並んでしまい埋もれやすいのですが、ブックフェアの会場で大手出版社の本と同列に置くことでPR効果も期待しました」

 出版物の大消費地である首都圏から離れた場所で出版活動を行う新聞社にとって、電子書籍などの新しいコンテンツ流通はこれまでの壁を破るチャンスになる。しかし、電子書籍市場か未発達で「まだ紙へのニーズが根強い」(大森部長)現段階では、電子書籍にだけ頼るわけにもいかない。

 同社の事例はDOD出版セン々一のPOD技術によって電了と紙を両方刊行することで、新しい口」能性を示す例だと言えるだろう。