「第47回FIPP世界メディア会議マドリード大会2025」報告書 一般社団法人 日本雑誌協会
第47回FIPP(グローバル・メディアのネットワーク)世界メディア会議はスペインマドリード市中心部の歴史的建造物であるマドリード総合芸術センターで2025年10月21日から23日まで開催された。日本からはコロナ禍後最大の14社26名での参加となった。FIPPの公式発表によると、約40カ国から500名以上が参加した大会とのことだった。日本はアジア地域から最も多い参加国となっており、FIPPボイル理事長の歓迎挨拶でも多くの参加者を輩出した国として日本を最初に取り上げていた。
ここ3年連続隣国ポルトガルでの開催が続いていたため、参加者は新しい会場を満喫した。2025年は、FIPPが創立100年という記念の年となり、歴代のCEOたちも集結し、お祝いムードが漂っていた。近年会議以外の社交行事等が簡素化されてきたが、今大会は欧米の大手出版社のスポンサーを得て、21日と22日は夜にウェルカムドリンクイベントが開催され、豊富なドリンクとピンチョス(スペイン名物の一口おつまみ)が参加者に振舞われ、参加者同士のリアルの交流に力を入れていたのが印象に残った。
2019年を最後に雑協からのスピーカーが絶えていたが、この記念すべき大会で日本のプレゼンスを上げるため、1年前よりFIPPにスピーカー枠を申請したところ確保に成功。今回は日本代表団の団長の野間省伸副理事長に講談社のマンガを起点としたコンテンツビジネスについて講演いただいた。大会全体では、前回以上に「生成AI」テーマが非常に多い中、日本のマネタイズ事例の紹介を世界に発信できたのは大変意義があった。
「生成AI」のあらゆる生活面での普及率は周知の事実だが、開発を促進するアメリカや中国とAIがもたらす著作権保護問題などに慎重な姿勢を示す欧州側の主張の違いがこの大会でもみられた。そんな中で、変わらないことは、信頼度の高いコンテンツを、オーディエンス(読者)が求めるスタイルで提供していくことが大切であるという主張だった。
FIPPは新たな100年に向けて歩き始めた。大会中ルイスCEOがFIPPとWAN-IFRA(世界ニュース発行者協会)との戦略的提携を発表し、業界の一層の発展のために力を尽くしていく決意を表明した。出版社は、これまでも様々なテクノロジーが登場する中でも上手に順応しながらもオーディエンスを第一に考えてきたのであって、我々がやるべきことは何も変わっていないという自負を会場一丸で確認できたのが一番の成果だったのではないだろうか。
マドリードはヨーロッパの中でも景気がよいらしく、人々の表情も明るく、その前向きな空気に触れられたのはとても心地よかった。改めて参加者の皆様には感謝申し上げる。
会議の詳細内容については次頁以降を参照いただきたい。
第47回FIPP世界メディア会議マドリード大会2025 プログラム
※画像をクリックすると拡大表示できます。
〈日本からの参加者26名〉
団長:野間省伸(講談社)
南條達也(Gakken)/藤田康雄・阪上大葉・齋藤一樹(講談社)/巴一寿・大橋美代子(光文社)/寺川光男・久保田邦彦(光和コンピューター)/木村玄一(ゴルフダイジェスト社)/丸山真人・原田健介(集英社)/守屋美穂・向山学・小林桐子(小学館)/福井由香里(地球の歩き方)/高見一・久保田紗衣(東洋経済新報社)/井口哲也・田中祐子(日経BP)/川又弘之(白泉社)/鉄尾周一(マガジンハウス)/正田省二(ワン・パブリッシング)/鈴木宣幸・木所隆介・中越明子(日本雑誌協会)
*FIPP=Fédération Internationale de la Presse Périodique(グローバル・メディアのネットワーク)
FIPP初体験と気づき
久保田邦彦(光和コンピューター)
初めてスペイン、訪れたのは首都マドリードです。東京やフランクフルトのように高層ビルが立ち並ぶ都市とは違い、街のあちこちに歴史を感じさせる建物が残っていて、日本でいう京都のような趣を感じました。
今回、FIPPへの参加も初めてでした。AIに関する話題が中心だろうと予想していたのですが、スケジュールを見ると、意外にも「収益」に関するセッションも多く組まれていました。全50セッションのうち、「AI」が11件(22%)、「収益」が9件(18%)と、割合はほぼ拮抗していました。
収益関連のセッションには特に関心があり、いくつか参加してみました。共通していたのは、これまで紙媒体で培われてきたコンテンツ資産(IP)を、電子化や版権、イベントなど、多様な形で活用する事例が紹介されていたことです。また、それらのサービスをB to CやB to Bなど、どの対象に提供していくかといった議論も多く見られました。
日本でも、多くの出版社が「どうすればコンテンツビジネスを会社の収益につなげられるか」、「紙以外の媒体で得た収益をどのように管理していけばよいのか」を悩まれている話をよく耳にします。今回のセッションを通じて、この課題は日本だけでなく世界共通のものだと感じました。弊社は基幹系システムのITベンダーですが、この課題に対してどのようなソリューションを提供すれば役立てるのか、より考えを深めていきたいと思います。
他のセッションでも多くの気づきが得られた旅でした。
AIが変える世界
寺川光男(光和コンピュータ―)
一昨年に雑協の賛助会員にならせて頂き、そのご縁でこの度のFIPP世界大会に参加させて頂きました。出版業界に特化したシステム事業者である私ども。その参加を暖かく迎えて頂いた版元の皆さんと雑協の皆さんに心から感謝申し上げます。
心に残る7日間の旅でした。
FIPP2025の議論を振り返ると、世界の出版業界が“同じ荒波”の中にいることを強く感じた時間でした。特にAIと権利処理のテーマはどのセッションでも避けて通れず、生成AIによる無断スクレイピング問題は欧米で最も深刻な懸念として共有されていました。企業が単独で対応するには限界があり、業界全体でAI企業に向き合おうという空気が広がっているのは、日本にとっても共通の大きな示唆です。
一方で、AIを脅威としてだけ捉えているわけではなく、編集作業の効率化や翻訳を用いたコンテンツの多言語展開など、成長のチャンスとして積極的に取り込もうとしている姿勢が印象的でした。TIMEやThe Atlanticが示したコミュニティ型メンバーシップの成長、イベント事業の台頭、紙媒体の価値再評価、そしてB2B情報サービスへの進化……どれも日本の出版業界が学ぶ点が多いと感じました。最終的には、どの国の出版社も「どこで勝つか」を真剣に考えている時代です。日本の出版社にとっても、AI、イベント、グローバル展開、B2Bなど多様な可能性の中から、自社の強みと結びつく道を選ぶことが鍵になると感じました。
一方、当社が担うシステム開発の在り様も大きく変わろうとしています。「AIが変えるソフトウェア開発の未来」「AIが変えるSIビジネス」がテーマになっています。AIコード生成ツールや自律型AIエージェントの登場が今までの常識を覆し、既存のビジネスモデルを根柢から覆します。開発プロセス自体をAIと共に変革する事により、開発速度と品質が従来と比較にならないレベルへと飛躍的に向上します。
変化の潮流に乗り遅れず精進したく思います。
光和コンピューター

